HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 30 Oct 2010 21:10:32 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:管制官有罪 安全の使命さらに重く:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

管制官有罪 安全の使命さらに重く

2010年10月30日

 航空機のニアミス(異常接近)事故で、誤った指示を出した管制官二人の有罪判決が確定する。事故は複合的な要因で発生したとされる以上、人とシステム両面から安全対策を推進すべきである。

 本格的に国際線定期便が復活就航の羽田空港の管制官は、今回の最高裁の決定にショックを受けただろう。井桁(いげた)状に配置された四本の滑走路と、一時間に数十回もの離着陸が行われる超過密空港だけに、管制官の緊張感は並大抵ではない。

 ニアミス事故は二〇〇一年一月、静岡県焼津市上空で発生した。日航機同士が接近したため東京航空交通管制部の管制官は片方の機に降下指示を出すところを、誤って別の機に降下を指示。指導役の管制官も見過ごしたことで両機は異常接近し、急降下した機の乗客乗員多数が負傷した。

 一審の東京地裁は事故は管制ミスだけでなく操縦士の判断や空域の混雑などさまざまな要因があったとして無罪とした。しかし二審の東京高裁は誤指示とニアミスとの因果関係を認め、執行猶予付き禁固刑を言い渡した。そして最高裁は管制官の上告を棄却した。

 ニアミスで管制官個人の刑事責任が問われた初めてのケースだった。日常的に起こるヒューマンエラーを裁くことができるのかが問われたが、現実に負傷者が多数出たことで責任を求める国民感情に沿った判決となった。

 被告側は「これでは現場の管制官は萎縮(いしゅく)する。世界の大勢に反する判断だ」と反発している。事故が発生したとき、欧米では原因調査に全力を挙げる。安全を損なった原因を解明して事故の再発防止につなげるためだ。

 日本では刑事責任の追及に走りがちである。利用客の安全向上を考えれば、今後は国土交通省運輸安全委員会の調査機能を強化し再発防止に重点を置くべきだ。

 ニアミス事故を教訓に国交省は〇二年、管制官と航空機の衝突防止装置(TCAS)とが異なる指示を出したときにはTCASに従うとのルールを決めた。

 さらに管制官の訓練・研修体制と管制支援システムの充実、横田空域の一部削減、航空路の再編と航空交通管理センターの設置など人とシステムの両面で安全強化策を打ち出した。

 それでも管制官の役割は重い。全国各地の空港や管制部などに勤務する管制官は約二千人。増員も必要だが、管制官個々のレベルアップに取り組んでもらいたい。

 

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