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秋は一番からだもこころもひきしまって、勉強のできる時――と童話「風の又三郎」の先生は言った。さわやかなその季節に、北からは寒波、南からは台風。乱調の秋に惑った10月の言葉から▼50代で視力をほとんど失った東京の染織家、浅野麻里さんが、盲導犬と出会って絶望を乗り越えた体験を絵本にして出版した。「視力は失っても、色彩の世界に身を置き、想像力で心が温かくなる話を書きたい」と書き下ろした。生きることに苦しさを感じている人に読んでほしい、と願いを語る▼福島県の平田村立蓬田(よもぎた)中学校では、生徒が毎年「学級歌」を作る。今年も3年生34人が100回も書き直して歌詞を仕上げた。音楽の久野(ひさの)雅敏先生(52)は「生徒たちが言葉と格闘してできた歌は、一つとして同じものがない」。まさにオンリーワンである▼無垢(むく)で笑える子どもの発言を紹介する小紙の投稿欄「あのね」が10周年。特集紙面に仙台の9歳、10月生まれの早川雄人くん。テレビで「今年は秋はない」というのを聞いて「エ!僕のお誕生日も今年はないの!?」▼名刺の肩書は「アマゾンの百姓」。ブラジルの開拓移民、長坂優(まさる)さん(70)は現地で植林活動に余念がない。「自然の恩恵を受けてきた百姓が破壊者になっていたんです」。開拓仲間とともに20年で5万6千本を植えた▼歌人の河野裕子(かわの・ゆうこ)さんをしのぶ会に皇后さまから歌が届いた。「亡き人」という詞書(ことばがき)に続けて〈いち人(にん)の多き不在か俳壇に歌壇に河野裕子しのぶ歌〉。言霊(ことだま)の幸(さきわ)う国に秀歌を残して去った人を、幾人が思う。