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2010年10月31日(日)付

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日中外交―泥沼には入らなかったが

ハノイで行うはずだった日中首脳会談は、中国側の一方的な拒否通告で実現しなかった。これで中国との関係は泥沼に入り込んだかに見えたが、きのう2人の「懇談」が短時間もたれ、ぎりぎりのところで踏みと[記事全文]

生物多様性―誇りを持って名古屋から

日本の都市の名を冠する二つ目の議定書が生まれた。生物多様性条約の会議で採択された「名古屋議定書」である。温暖化の京都議定書に続き、議長国日本が誇りにできる成果だ。久しぶ[記事全文]

日中外交―泥沼には入らなかったが

 ハノイで行うはずだった日中首脳会談は、中国側の一方的な拒否通告で実現しなかった。これで中国との関係は泥沼に入り込んだかに見えたが、きのう2人の「懇談」が短時間もたれ、ぎりぎりのところで踏みとどまった。

 菅直人首相と温家宝(ウェン・チアパオ)首相は今後「ゆっくり」話す機会をつくることや、引き続き「戦略的互恵関係」の推進に努力していくことで一致したという。

 しかし、ハノイ会談は、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件でささくれ立った日中関係を本格的に回復させる機会になると期待されていた。それだけに、見送られたのは極めて残念である。

 中国外務省幹部は会談を拒んだ理由として、ハワイでの日米外相会談で、クリントン米国務長官が尖閣諸島について日米安保条約の対象になると発言したことを挙げる。29日にあった日中外相会談について、日本側が「事実に反する話」を流したことも非難する。

 いずれも首脳会談を一方的にご破算にするには説得力を欠く指摘であり、大国にふさわしくない大人げない外交と言わざるをえない。

 尖閣諸島をめぐる米国の立場は従来と何ら変わりない。事実に反する話とは、「東シナ海のガス田共同開発の交渉再開で合意」との外国通信社の報道だが、日本政府の要求で訂正された。

 中国が首脳会談を拒んだ背景のひとつには、国内事情があると見られる。

 中国内では反日デモが続いており、一部では共産党や政府への抗議も唱えられている。そんなおり、指導部は日本に弱腰と見られるのは避けたいし、党内にも根強い反日の空気に配慮しなければならないのだろう。

 しかし、対日関係の修復は中国の安定的な経済発展に欠かせないし、国民の利益にもなる。

 それは双方の問題にとどまらない。日中関係が良好に維持されることは、アジアと世界の安定と平和にとって死活的に重要である。今のような状態が続けば、国際社会が中国に向ける視線も厳しさを増すことは避けられまい。

 中国の指導者は大局的判断に立ち、国民に日本との関係の大切さを改めて説得すべきである。

 中国には、前原誠司外相を対中強硬派と見る人が少なくない。「前原はずし」を望む声も聞かれる。そういうことをいちいち気にかける必要はない。

 とはいえ、前原外相も日本の「確固たる立場」を繰り返すだけではいけない。硬軟織り交ぜて中国を説得できる自在な外交術を見せてもらいたい。

 衝突事件発生以来、菅首相がリーダーシップを発揮する場面が見えない。外交を人任せにしすぎてはいないか。

 横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が迫っている。胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席を、どう迎えるのか。日中外交の困難はなお続く。

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生物多様性―誇りを持って名古屋から

 日本の都市の名を冠する二つ目の議定書が生まれた。

 生物多様性条約の会議で採択された「名古屋議定書」である。温暖化の京都議定書に続き、議長国日本が誇りにできる成果だ。久しぶりに笑顔と拍手で終わった環境会議でもあった。

 名古屋会議で採択された主なものは、議定書と、2020年に向けた生態系保全の目標「愛知ターゲット」、途上国への資金援助戦略の三つだ。

 生物多様性条約は1992年にできたが、「対象が広すぎる」として主要な分野で世界全体の対策を盛り込んだ議定書ができなかった。18年たっての大きな前進になった。

 議定書は、ABS議定書ともよばれる。条約の主要目的の一つ「遺伝資源から得られた利益の公平な配分」の頭文字をとった。先進国の企業が途上国の資源を利用して薬などを開発する場合、利益の一部を原産国に支払うようになる。そのルールを決めた。途上国には豊かな生物資源が富をもたらし、先進国の企業も開発やビジネスをしやすくなる。

 愛知ターゲットは「生物多様性の損失を止めるための効果的で緊急の行動を実施する」を全体目的とし、20の個別目標を掲げた。02年につくった10年目標が全く達成できなかったため、今回は「陸域で17%以上、海で10%の保護区をつくる」と数字を入れた。

 南の途上国と北の先進国が対立したため、妥協によって緩い内容になった点もある。しかし、三つの枠組みができたことを評価したい。

 地球環境の交渉会議は、「全会一致方式」を逆手にとった議事妨害や引き延ばしがしばしばおきる。昨年12月、コペンハーゲンで開かれた温暖化の交渉会議(COP15)が典型だ。

 ナミビア代表が「コペンハーゲンの失敗を繰り返せば、歴史は今の政治指導者を許さないだろう」と演説するなど、国際世論を無視した妨害を自重する雰囲気が今回はあった。議長国の日本も反対意見を何度も聞いて丁寧な運営に徹し、合意を積み上げた。

 しかし、成功に浮かれている時間はない。

 地球環境問題で国際社会の対応は順調といえない。乱開発による生態系の破壊はいっそう速度を増している。温暖化の規制づくりは足踏みしている。

 これらの分野で主導する国になりたい。今回のように、重要な国際会議を開いて成果を上げることの意味は大きい。国内の関心が高まり、NGOが育ち、国際社会での発言力が増す。

 そして真のリーダーシップは、世界に先がけて国内政策を充実し、その実績と国民の支持に基づいて、国際社会に先進的な提案をしてこそ生まれる。

 二つの議定書を生み出した国の覚悟が日本に求められる。

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