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2010年10月30日(土)付

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東アジア会議―米ロ参加を安定への風に

日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国の首脳が集まる東アジアサミットがきょう、ベトナムのハノイで開かれる。米国のクリントン国務長官、ロシアのラブロフ外相を招いて米ロの正式参加を決[記事全文]

管制官有罪―刑事責任の追及を超えて

静岡・焼津上空で9年前に起きた航空機同士のニアミス事故で、業務上過失傷害の罪に問われた管制官2人の有罪が確定することになった。航空機の便名を取り違えて指示を出した。最高[記事全文]

東アジア会議―米ロ参加を安定への風に

 日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国の首脳が集まる東アジアサミットがきょう、ベトナムのハノイで開かれる。米国のクリントン国務長官、ロシアのラブロフ外相を招いて米ロの正式参加を決定する。

 来年のインドネシアでの会議には米ロの大統領が出席する予定だ。両国の参加によって、この地域共同体の枠組みは、東南アジアを扇の要としつつ、米ロに届く首脳間のネットワークへと変容を遂げつつある。

 この変化を促したのは言うまでもなく、アジアが国際社会で極めて重い意味を持つ地域になったことだ。目覚ましい発展を続けるアジアのエネルギーを取り込もうと、世界はこの地域に熱い目を向けている。

 中小国の集まりであるASEANが好機を逃さず、米ロを引き寄せた。日米中ロといった大国の均衡を図りながら恩恵を引き出す。そんなしたたかな外交戦略がうかがえる。

 しかし変化の時代はまた、国家間のきしみが生じやすい時でもある。

 折しも、中国と国際社会との間でさまざまな対立が起きている。この地域では南シナ海の島々の領有権をめぐってASEANの一部の国々と、尖閣諸島や東シナ海の天然ガス開発をめぐっては日本と、摩擦が生じている。

 海洋への膨張志向に対する警戒感が広がっていることを、中国の指導者は真剣に受け止めるべきだ。

 とはいえこのサミットを、日本や他のアジア諸国が、米ロの威光を背に中国に対抗する場と見るのは間違いだ。ハワイでの演説でクリントン国務長官は、米国が中国の包囲網づくりに動くどころか、包括的な協力関係を強める姿勢を明確にした。

 南シナ海の領有権や北朝鮮の核問題など課題は山積している。サミットの場で首脳は互いの懸念について率直に意見を戦わせ、地域の安定実現に努力してもらいたい。

 日本は5年前、オーストラリアやインドなど3カ国をASEANプラス3(日中韓)の枠組みに誘って、東アジアサミットを発足させた。

 ASEANプラス3は金融や防災の協力態勢作りの実績をあげた。日本主導のサミットの枠組みが変容しても嘆く必要はない。しかし米ロの参加によって、サミットで日本の存在感が消えてしまうようではいけない。

 菅直人首相はハノイでメコン川流域諸国の発展への協力や、日本・ASEANの長期計画づくりを表明した。いずれも従来の取り組みの延長である。

 いま必要なのは、中国の台頭という時代変化を踏まえながら、アジアに平和と繁栄を築く大きな構想だ。

 米ロが参加するサミットを、地域の信頼と安全保障を支える協議の場として育てていきたい。

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管制官有罪―刑事責任の追及を超えて

 静岡・焼津上空で9年前に起きた航空機同士のニアミス事故で、業務上過失傷害の罪に問われた管制官2人の有罪が確定することになった。

 航空機の便名を取り違えて指示を出した。最高裁の決定に書かれているように「職務上の義務に違反する不適切な行為」があったのは間違いない。

 だからといって、直ちに刑事責任を問えるのか、そして問うのが適切なのか、判断の難しいケースだった。

 裁判所も迷い、揺れた。一審の東京地裁は、指示は間違いだったが、一方の航空機が急降下して乗客にけがをさせるまでには様々な要因が絡んでいたことを踏まえ、無罪を言い渡した。これに対し二審の東京高裁は、検察側主張を認めて逆転有罪とした。

 そして最高裁。5人の裁判官のうち1人は、管制システムの限界や衝突回避のためのルールの未整備、航空機の性能に対する機長の認識不足などを指摘し、無罪の意見を表明した。

 事故を起こそうと思って仕事をする管制官などいない。だが人間である以上、間違いは免れない。たとえ間違いを犯しても、惨事に至らぬように何重もの安全策を講じる。あわせて、なぜ間違いが起きたのかを徹底検証し、安全の水準をさらに高めていく。

 航空機の運航のように、高度で複雑なシステムが相互に関連し、多くの人間がかかわって初めて機能する世界では、こうした対応が不可欠だ。

 しかし、刑事責任の追及が先に立つと、容疑者の立場に立たされた個人は自らの身を守ることを優先し、その結果、検証のために必要なデータや情報が提供されなくなる事態を招く。現場の担当者や一部の管理職の責任を問うことが、社会全体の利益を損なうという構図が浮かび上がる。

 米国などでは原因究明と再発防止を重く見る考えが確立し、それに応じた法制度や調査体制が整えられている。国内では2カ月前、当時の前原誠司国土交通相が刑事捜査優先の現状の見直しを提起したが、今回の最高裁決定によってそうした機運をしぼませてはならない。国民も、事故の経緯の解明と処罰を法廷に同時に求めても、限界があることを認識する必要がある。

 北海道・旭川空港近くでも、あわや大惨事という管制トラブルがあった。一連のシステムの中で起きるヒューマンエラー(人為的ミス)にどう向き合うか。それは、医療や科学技術などの分野にも共通する課題だ。

 社会的合意を形づくるのは容易な話ではないかもしれない。だが被害者の望みもまた、原因究明であり再発の防止だ。専門家集団の責任逃れとの疑念をもたれぬよう、検証・説明・改善のサイクルを構築し、旧来の枠組みから踏み出す。最高裁の決定を、こうした議論を深めていくきっかけにしたい。

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