民主党が今年に入って自粛していた企業・団体献金の受け取り再開を決めた。衆院選マニフェストには三年後の全面禁止を明記していたではないか。国民との約束を反故(ほご)にすることは許さない。
自らの約束を実現するための歩みを、なぜ止めるのだろう。
「政治とカネ」が大きな争点となった衆院北海道5区補欠選挙で民主党候補が敗北した直後の企業・団体献金受け取り再開決定に、怒りを覚える国民も多いはずだ。
党内でも早速、前原誠司外相が「国民と違う方向を向いている」と異を唱えた。当然だろう。
民主党は昨年の衆院選マニフェストで三年後からの企業・団体献金禁止を掲げ、当面の措置として国や自治体と一件一億円以上の契約を結ぶ企業の献金を禁止した。
さらに今年からマニフェストよりも踏み込み、対象を契約額一億円未満の企業・団体にも広げた。
今回の決定は、契約額一億円未満の企業・団体のうち、「癒着とみられない」と判断した企業・団体からのものに限って献金受け取りを再開するものだ。
政党交付金に八割以上を依存する党の財務体質改善のためとか、経済界との関係改善のためとか、来年の統一地方選を前に企業献金が自民党に流れるのを阻止するためとか、さまざまな理由が挙がる。
しかし、ロッキード、リクルート両事件など自民党政権下で金権スキャンダルの温床になった企業・団体献金の禁止は、民主党が目指す「クリーンな政治」の根幹であり、立党の原点ではないのか。
一部とはいえ、献金再開は、クリーンな政治の実現を期待して自民党政治の転換を民主党に託した国民の期待を大きく裏切る。
そもそも民主党は、企業・団体献金禁止の前提とした個人献金の促進・普及のための努力をどこまでしたのか。何も力を尽くさぬ中での献金再開は許されない。
党代表の菅直人首相は二十五日の参院予算委員会で、公明党の草川昭三氏に、企業・団体献金の禁止や罰則強化のための政治資金規正法改正への協力を求めたが、これも空約束だったのか。
民主党は企業・団体献金の受け入れ再開の決定を即座に撤回し、個人献金を促進するための同法改正案を早急に国会提出して成立に全力を挙げることを求めたい。
企業・団体献金と政党交付金の二重取りは納得がいかない。企業・団体献金を再開するなら、政党交付金は潔く返上すべきである。
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