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10月28日付 編集手帳

 芥川龍之介の歌がある。〈幾山河(いくやまかわ)さすらふよりもかなしきは都大(みやこおお)()をひとり行くこと〉。にぎやかで華やいだ空間に身を置くとき、大のおとなでも孤独は骨身に染みとおる◆食器の触れ合う音と、笑い声と、おしゃべりと、好きな子同士が机を寄せ合って食べる給食の時間は毎日、ピクニックのような楽しい音に満ちていただろう。ひとりぼっちのその子には拷問(ごうもん)の時間だったかも知れない◆自殺した群馬県桐生市の小学6年、上村明子さん(12)の父親によれば、以前にも同級生から「近寄るな」「汚い」などと言われたことがあり、両親が学校側に10回以上も、いじめについて相談していた◆事件後の保護者会でいじめの有無を問われた校長は「プライバシーの問題」だとして答えなかったという。「保身の問題」と聞こえる。死んだあとまで、明子さんを泣かすのはやめよう◆遺品を整理していた家族は、明子さんがノート3ページに描いた漫画を見つけた。「関口桜」という名の女の子が新しい学校に転入してきた設定である。表題は〈やっぱり『友達』っていいな!〉。架空の少女に見果てぬ夢を託したのだろう。

2010年10月28日01時30分  読売新聞)
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