HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 27 Oct 2010 22:10:56 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:海洋保護区 広げたい里海のこころ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

海洋保護区 広げたい里海のこころ

2010年10月27日

 海は広いが、不死身でも無限大でもない。身近な里海にも保護が必要な時代。保護区をどう設定するか。その数値目標は、南北が隔たる生物多様性条約名古屋会議(COP10)終盤の大きな論点だ。

 COP10で公表された国際自然保護連合(IUCN)の報告書によると、広い世界の海のうち、現在、開発や漁業の規制が敷かれ、保護されているといえる面積は、全体の1・17%しかない。陸域の保全面積の12%に比べても、海の保護区は少なすぎるといっていい。

 生物の消失に歯止めをかける、COP10の二〇二〇年までの世界共通目標作りの議論では、欧州や日本など先進国は「15%保護」の条約事務局案を支持しているが、中国が6%を主張するなど、途上国側は、漁業への影響を懸念して、より低く抑えたい考えだ。

 国連環境計画(UNEP)がCOP10で公表した「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)の最終報告では、乱獲による漁業資源の損失だけで年四兆円余に上る。UNEPは日本を含む北西太平洋海域で乱獲が進みすぎ、五〇年までに大型魚がほぼ消滅するとの警告も発している。今海を守らねば、南北を問わず地球全体が、先々大きな損をする。

 日本は、領海・排他的経済水域(EEZ)の広さが世界第六位の海洋国。ところが、保護区の定義すら定かでないのが現実だ。世界自然保護基金(WWF)ジャパンの調べでは、保護される日本の海の割合は、鳥獣保護法や海中公園地区による規制区域など、4%足らずしかない計算だ。

 だが日本には、身近にあって、さまざまな恵みを与えてくれる地域資源の「里海」を、漁民と住民が協力して荒廃から再生させた例も数多い。大分県の中津干潟などだ。住民は浜辺に遊んで、海に親しみ、地元で捕れる魚を食べて、地域ぐるみで漁民の暮らしを支援する。漁民は魚の産卵場になる藻場の再生や干潟の保全などに取り組み、両者が協力して海辺の清掃活動に精を出す。

 このような成功例を示しつつ、海の生きものを管轄する農林水産省と環境省が縦割り行政を改めて、協力し合い、「里海」保護への強い姿勢を打ち出すべきだ。海を守るということは、そこから上がるさまざまな利益を守ること。世界一の魚食国日本が、保護区のメリットを自信を持ってアピールすれば、南北が歩み寄る機運もきっと高まるはずだ。

 

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