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10月27日付 編集手帳

 宇野重吉、芥川比呂志…俳優出身の演出家には、名優とうたわれた人が多い。「いい役者でなかった君に、演出なんか出来ないよ」。蜷川幸雄さん(75)は演出家を志したとき、周囲の人に言われたという◆俳優と二足のわらじを履いていた頃のこと、今は亡き女優の太地喜和子さんが蜷川さんの出演したテレビドラマを見た。高橋豊さんの『蜷川幸雄伝説』(河出書房新社刊)によれば、太地さんのひと言が演出家に専念させるきっかけになったという◆「蜷川さん、尊敬できなくなるから俳優をやめてちょうだい」。そこから“世界のニナガワ”が生まれていくのだから人生は面白い◆蜷川さんに今年度の文化勲章が贈られる。4年前に読売演劇大賞を受けた時、選考委員の矢野誠一氏は審査評に書いた。〈おのれのキャリアは破壊するためにある、としているような蜷川の仕事は…〉。守りに入らず、攻めて、攻めて、(つく)りつづけた人が迎える晴れの日であろう◆失意と焦燥の若き日、自宅玄関に〈蜷川TENSAI(天才)〉という自己暗示の表札を掲げていたと聞く。表札は今、舞台を見る観客の胸にある。

2010年10月27日01時46分  読売新聞)
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