参院予算委員会の集中審議では「政治とカネ」の問題も主要テーマとなった。強制起訴が決まった小沢一郎民主党元代表に説明不足も感じる国民も多い。まずは政治倫理審査会で説明してはどうか。
集中審議は本来、経済・財政と外交・防衛に関するものだった。
しかし、与野党がともに衆院北海道5区補欠選挙での民主党敗北を取り上げ、菅直人首相は敗因について「『政治とカネ』の問題も影響があったとみることもできる。真摯(しんし)に受け止める」と答えた。
共同通信社の出口調査によると、小沢氏や陣営の違法献金事件で辞職した小林千代美前衆院議員らの「政治とカネ」の問題を「投票の判断材料にした」との答えは58・5%に上った。
政治家であろうとも推定無罪原則が適用されるのは当然であり、事実関係は裁判で争われるべきだ。同時に政治家は、法的責任のほかに政治的責任も問われる。
社民党を除く野党各党は小沢氏の証人喚問を求めている。「政治とカネ」が民主党政権の信頼を蝕(むしば)み、補選の敗因にもなったのなら、国会で説明する政治的責任をこれ以上回避する理由はない。
全党一致が原則の証人喚問が当面難しいなら、原則非公開で偽証罪に問われない国会の政治倫理審査会(政倫審)でまず説明をするのが、現実的な方法だろう。
小沢氏はこの場で、問題とされた土地購入資金の出所や政治資金収支報告書の虚偽記載を了承したか否かを堂々と説明すればよい。
小沢氏にとっても政倫審での説明は、国民に対して国会議員を通じて、自らの「潔白」を訴える良い機会になるのではないのか。
気になるのは、首相が、国会の決定と小沢氏本人の意向を尊重する姿勢を示し、国会での説明を積極的には促していないことだ。
首相は自著「大臣」で「首相は与党の党首である。自分の党の議員が疑惑を持たれているのであれば、党首として何らかの措置をとるべきだろう」と記している。
民主党代表でもある首相は党首として、小沢氏に国会で説明するよう促すべきである。
首相が「有言実行」内閣を標榜(ひょうぼう)するのであればなおさらだ。首相が「有言不実行」を続ければ続けるほど、民主党政権への信頼はさらに揺らぐ。
有権者は政権交代に「政治とカネ」の問題との決別をも託したはずだ。躊躇(ちゅうちょ)している時間的余裕はもはや民主党に残されていない。
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