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生きものをうたう名手、詩人の工藤直子さんは「こねずみしゅん」などの異名でも詩をつくる。そうした一作「ひなたぼっこ」では、小さなネズミがお日様に感謝の思いを告げる▼〈でっかい うちゅうの なかから/ちっぽけな こねずみ いっぴき/みつけだして/おでこから しっぽのさきまで/あたためて くれるのね/・・・・/おひさま/ぼく/どきどきするほど うれしい〉。これが全文。さまざまに読めようが、まずは命を育む太陽のありがたみに思いが至る▼米国の研究班が、これまでで最も地球に似た環境の惑星を見つけたという記事を読んだ。太陽に相当する恒星との距離などから、その星には、生命に欠かせない水や大気が存在する可能性があるらしい▼地球に生命が栄える理由の一つは、太陽との距離にある。水が液体でいられる温度は狭い。熱ければ蒸発し、寒いと凍結する。こねずみ君をほっこり温める絶妙な距離は、「でっかいうちゅうのなか」では奇跡と言っていいそうだ▼ほかにも多くの偶然が重なり、生命は地球に誕生した。いま3千万種もの生き物が球体上に命をつなぐ。大きな顔の人類も、先祖は恐竜時代にはネズミほどの哺乳類(ほにゅうるい)だった。たまさかの進化で疫病神となっては、お天道様に申し訳ない▼名古屋で開催中の「国連地球生きもの会議」は、生態系保全などの交渉が難航しつつ終盤に入る。会議が「失望の記念碑」にならぬよう願う。生きものをうたうコツは生きものになりきること――そんな工藤さんの「心」が会議にありや。