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10月23日付 編集手帳

 〈昔の(はなし)()は所帯を持つとき、「米だけはいいのを買いなよ」と先輩に言われたものです〉。吉川潮さんの『人生、成り行き 談志一代記』(新潮社)のなかで立川談志さんが語っている。〈そうすりゃ副食物(おかず)に金をかけずにすむというわけでね〉◆ふっくら炊けたおいしいご飯があれば、おかずに文句は言わない――うなずくご飯好きは多かろう。食卓に向かうのがうれしい新米の季節がめぐってきた◆…と、いつもの秋のようには喜んでもいられないらしい。最も品質の高い「1等米」の比率が、今年は激減しそうだという◆9月末時点で64・4%(前年同期83・0%)と、比較可能な過去12年間で最低となった。記録的な猛暑は人の身体のみならず稲の生育にも影響したようで、コメどころの新潟県も19・7%と打撃が大きい。2等米以下の比率が増して米価の行方が心配な農家も気の毒だが、ご飯好きとしても品質の低下は心細い◆国文学者の沼波瓊音(ぬなみけいおん)に1等米の句がある。〈秋刀魚(さんま)()でたり一等米をあつらへよ〉。食欲のほとばしる命令形だが、この秋は少しばかり遠慮がちに言わねばならないようである。

2010年10月23日01時40分  読売新聞)
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