HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 22 Oct 2010 21:13:20 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:演劇では、舞台の照明が落ちて暗くなる「暗転」の手法がよく使…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年10月22日

 演劇では、舞台の照明が落ちて暗くなる「暗転」の手法がよく使われる。その時はまだぼんやりと役者や舞台装置の影が見えることが多いが、誰かにスポットライトが当たった瞬間、その人以外の一切は、闇に沈みステージからかき消される▼それに似たことは現実世界にもある。例えば昨年の世界保健機関(WHO)年次総会。ここで強烈な光が当たったのは例の新型インフルエンザ。会議はその対策一色となり、その結果、いくつかの深刻な病気の対策は議題からふるい落とされてしまった▼ある大災害への関心が次の大災害によって一気に薄れてしまうのもしかり。強い光は、それが当たるものを浮き立たせるだけでなく「それ以外」をかえって暗く沈める▼チリの落盤事故で地下七百メートルに閉じ込められた作業員らの生還劇はまだ記憶に新しい。「奇跡」のドラマで主人公となった三十三人は、これ以上ないほどのスポットライトを浴びたが、ここにも「それ以外」がある▼同僚たちだ。三百人以上が働いていた現場の鉱山は事故で閉鎖され、失業状態。失業手当や賃金の支払いを求めて抗議を行っている。「作業員は三十三人だけじゃない」と訴えるが、大きな注目を集めることはない▼高額のインタビュー料を稼ぐなど、今や「セレブ並み」とも評される生還者たちだ。それとの対照を思えば、同情を禁じ得ない。

 

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