景気が足踏み状態に入った。先行きについても、日本経済は「再びマイナス成長に転落する」との見方が出ている。政府・日銀は補正予算の早期成立や金融の追加緩和など万全の対応が必要だ。
政府は十月の月例経済報告で景気の基調判断を「このところ足踏み状態」として、九月の「持ち直し」から下方修正した。
民間では、かねて景気の不透明感を懸念する声が強かったが、政府も期待交じりの甘い判断から、ようやく軌道修正した格好だ。七月以来、円高が進展して輸出製造業が大きな打撃を被る中、政府も現実を直視せざるをえなくなった。
政府・日銀の市場介入や金融緩和にもかかわらず、円高の流れは変わらず、一ドル=八〇円の大台突破も時間の問題とみられている。そうなれば、目先の収益悪化だけでなく、中期的にも製造業は工場の海外移転を急ぐだろう。
実際、トヨタや日産など自動車メーカーは主力車種を含めて海外生産の体制構築を進めている。こうした動きが電機など他の製造業にも広がるのは必至だ。
加えて、政府のエコカー補助金も九月で打ち切られた。政府が税金を使って販売をてこ入れすれば、駆け込み需要とやめたときの反動減が避けられないのは自明とはいえ、結局、需要の自律的回復には結び付かなかった。
先行きをみても、十〜十二月期はマイナス成長に陥るとの悲観論が広がりつつある。為替が円安に反転する可能性は皆無ではないものの、来月初めにも米国が追加金融緩和に踏み切るとみられ、しばらく円高基調が続きそうだ。
政府は近く、経済対策を盛り込んだ補正予算を国会に提出する。ねじれ国会の下、政府は野党の声も聞きながら、一日も早い成立を期すべきだ。
日銀は先に事実上のゼロ金利復活を宣伝したが、政策金利はゼロまで低下していない。長期国債などの資産買い入れも一年後に総額五兆円という話であり、実際の政策は「包括的金融緩和」のうたい文句にほど遠い。
円高が止まらない一因は、市場が金融緩和に中身がないと読み切っているからでもある。
欧米を含めて通貨安競争に突入したかにみえる現状で、為替相場の人為的操作と疑われかねない市場介入は慎重にすべきだが、景気を支える金融緩和をためらう必要はない。日銀は手遅れになる前に、一段の緩和を目指すべきだ。
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