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天声人語

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2010年10月22日(金)付

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 チリの鉱山事故から生還した33人の最年少は19歳だった。彼は今も、地下に閉じ込められている夢を見るらしい。「夜中に跳び起き、私の枕元に座っていることがある」と、母親が本紙に語っている▼暗い坑道の奥での70日。人生観や性格を変えるには十分だろう。感じやすい若者であれば、心に闇が残っても不思議はない。ただあの狭い避難所こそが、混乱の末に連帯を生み、後の奇跡を育む「ゆりかご」だった▼地下の空間はしかし、生活の落とし穴にもなる。岐阜県御嵩(みたけ)町の住宅地で大きな陥没が起き、6棟が傾いた。町では明治期から戦後にかけて亜炭の採掘が盛んで、浅い廃坑に地面が落ち込む事故がままある。今回は75メートル×65メートルの土地が最大3メートル沈んだ▼廃坑網の上に広がる町を、年に何回か超局地的な「地震」が襲う図だ。町長が風評を気にする通り、いつ沈むとも知れない土地に財を築く人はいない。戦中戦後の家庭に火を恵み、日本の窮乏期を支えた穴である。旧産炭地の宿命と突き放す気にはなれない▼局地的といえば奄美大島の豪雨もひどい。ピークには2時間で10月の平均雨量を降りきったそうだ。電気、通信、道路は寸断され、土砂崩れや洪水の全容はつかめない。学校で夜を明かした子、散り散りになった家族も多い▼大抵の災害は遠い出来事だが、その真ん中には必ず、人生を左右される人たちがいる。恐怖の体験は夢にも出よう。ニュース映像に息をのむだけでなく、救援物資と一緒に思いを届けたい。異国の地底に送った以上の、連帯の気持ちを。

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