HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17357 Content-Type: text/html ETag: "bdcab-43cd-fc358100" Cache-Control: max-age=4 Expires: Thu, 21 Oct 2010 03:21:42 GMT Date: Thu, 21 Oct 2010 03:21:38 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年10月21日(木)付

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 海外旅行が自由化されたのは1964年春だった。ほどなく本紙の「サザエさん」に羽田空港が描かれた。福引で欧州一周を当てたサザエさんは着物である。追いすがるタラちゃんは祖母らに引き留められ、展望デッキで泣くばかり。手には母の付け帯が握られているというオチだ▼総出で見送った磯野家ならずとも、日本の玄関、東京国際空港はその名もまぶしいハレの場だった。世界への始発駅、「万歳」が響く雄飛の門口にして、時代の先端を行く観光地。ビートルズも降りた▼78年の成田開港後、国会で「わが国の空の玄関はどこか」と質問が飛んだことがある。国際線が去った後も、要人の往来には羽田が使われていたためだ。時の運輸相は「常識的には成田」と答弁し、羽田を通用口に例えた▼その古玄関にきょう、新しい滑走路と国際線ターミナルが開業し、各国への定期便が32年ぶりに飛び始める。再び世界に開かれる羽田は、使いやすい勝手口として復権するだろう▼だが、国内の玄関争いを尻目に、東アジアの「正門比べ」が決しつつある。海外路線は成田が91、羽田は予定込みで17。かたや韓国の仁川(インチョン)は世界140の都市と結ばれ、日本からの経由客を年100万人近く持っていく▼首都圏の二大空港を国際と国内に分けた愚は問うまい。国益より票田を思う政治の果て、アジアの正門を競う発想は乏しく、地方に開けた「小窓」は100に近い。せめて両港の行き来を便利にし、「羽成田」とでもして一体活用したい。今の日本、表札を二つ出す余裕はない。

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