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10月20日付 編集手帳

 脚本家の倉本聰さんが北海道・富良野に移り住んだ頃という。芦別岳の森を歩きながら、案内人に恐る恐る尋ねた。クマは大丈夫でしょうね? 著書『左岸より』(理論社)に書いている◆案内人が答えていわく、「なあに、ここらのクマは気だてがいいから」。さらに、「面長のクマだけ気ィつけてりゃいい。丸顔のクマは大丈夫なもンだ」◆そういう語り伝えがあるのか。冗談か。面長が空腹による“面やつれ”を指すとすれば、その判別法も幾分かはうなずける。各地で人里にクマが出没している。襲われた人も出た◆主食のドングリが不作で、餌を求めて人里に足を延ばすらしい。クマの暮らす山の森と、人里とを隔ててきた緩衝帯――「里山」の荒廃も影響しているといわれる。里山の再生など長い目でみた処方(せん)は処方箋として、まずは目先の危険を避けねばならない。冬眠に入る11月半ばまで、用心の上にも用心が要る◆人間にたとえれば終戦後の食料不足にわが子を飢えさせぬため、危険をいとわず、すし詰め列車で買い出しをした人の心境なのかも知れない。思えば、面長のクマも気の毒である。

2010年10月20日01時16分  読売新聞)
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