羽田空港の新国際線旅客ターミナルが二十一日開業し、月末から三十二年ぶりに国際定期便が就航する。国際ハブ(拠点)空港化や観光振興など期待は大きいが、利用客の安全徹底が最重要課題だ。
多摩川河口に新設されたD滑走路は長さが二千五百メートルで埋め立てと桟橋による複合構造体。これで羽田は南北方向にAとC、東西方向にBとDの四本の滑走路が井桁(いげた)状に配置された世界でも珍しい空港となる。
年間発着回数は現在の約三十万回から約三十七万回へ増え、最終的には二〇一三年度に四十四万七千回と約一・五倍になる。国際線は昼間時間帯六万回、深夜早朝時間帯三万回の計九万回である。
当面はパリやニューヨークなど主要十七都市にとどまるが、立地の良さからこれまで韓国・仁川空港などに奪われてきた地方の海外旅行客を呼び戻すチャンス−と政府や観光業界は期待する。
また成田空港も四年後をめどに発着回数を三十万回に拡大する予定であり、国際線と国内線の乗り継ぎを便利にして観光立国実現の拠点としたい考えだ。
だが、期待が大きいほど安全運航を忘れてはいけない。
羽田空港の西側には米軍管理の横田空域が横たわり、東側には自衛隊管理の百里空域がある。民間機が自由に飛べる範囲は事実上、東京湾上しかない。
これに過密ダイヤと、四本の滑走路の運用が絡む。空港管制官の役割は極めて重要になる。
たとえば北風の時は滑走路はAとCを到着便に使うが、その際一番南にあるDの上空を飛ぶ。また南風では千葉方面からBとDを到着便に使うが、ここでもAとCからの出発便と交差する。
国際航空運送協会(IATA)によると航空事故のうち管制官とパイロットとの意思疎通の欠如などが全体の四割近くもある。一九七七年のスペイン領カナリア諸島テネリフェ空港で起きた大事故、二〇〇一年の静岡県沖での日航機同士のニアミス事故などの教訓を忘れてはいけない。
テロ対策は万全だろうか。新国際線旅客ターミナルはモノレールと地下の駅から、そのまま出発ロビーに直行できる。警備態勢をしっかりと点検してもらいたい。
滑走路などの大地震対策も気掛かりだ。阪神淡路大震災級の揺れに対する補強工事が遅れている。国・自治体、民間企業など関係者は協力して早急に施設全体の耐震性強化に取り組んでほしい。
この記事を印刷する