二年後に任期を終える胡錦濤総書記に代わる中国の次の最高指導者は習近平氏に事実上決まった。社会の格差が激化する中、二世政治家の習氏が弱者の立場に立てるかどうかが統治のカギを握る。
十八日まで北京で開かれた共産党の中央委員会全体会議で、国家副主席の習近平氏(57)が軍の指揮権を握る党中央軍事委員会副主席を兼ねることが決まった。
現在の最高指導者、胡錦濤氏(67)は二〇〇二年の党十六回大会で党総書記に選ばれたが、その三年前の党中央委全体会議で国家副主席に加え軍事委副主席を兼務した。その後、江沢民氏から党総書記、国家主席、軍事委主席の座を受け継ぎ権力を一身に集めた。
習氏も胡氏が二期十年に及ぶ任期を終了する二〇一二年の党十八回大会に向け、最高指導者に選ばれる助走を始めたことになる。
ここまでの道は決して平らではなかった。胡氏の意中の後継者は同じ共産主義青年団出身の李克強副首相(55)だったといわれる。三年前の党十七回大会では習、李両氏が次期トップの座を争い、両者とも最高指導部の党政治局常務委員となり習氏が党務、李氏が国務を担当することになった。
「和諧(調和)社会」の実現を掲げ格差是正を強調した胡、李両氏に対し、習氏を推したのは高度成長で恩恵を受けた地方幹部や企業経営者らだったといわれる。
李氏は共青団中央第一書記から河南省、遼寧省など経済の立ち遅れた地域の指導をしてきた。
これに対し習氏は福建省、浙江省、上海市など経済先進地域で経験を積み、民間企業育成にも実績がある。党長老で副首相まで務めた故習仲勲氏を父親に持つ。
多くの国有大企業や民間有力企業を経営し政界進出も著しい革命元老二世たちとも関係が深い。妻の彭麗媛さんは軍所属の美人歌手で、多くの軍人ファンを持つ。
こうした習氏の強みは弱点でもある。今の中国では党上層部とコネを持つ有力者が、政治のみならず経済も牛耳り富を独占していることに庶民の反発は強い。
家庭的な背景もなく党のトップに駆け上がった胡主席や温家宝首相が、民衆に寄り添う姿勢を示したことは人気が高かった。
習氏は文化大革命で父親が迫害され自らも農村労働に従事した。この体験を生かし、改革・開放の恩恵から取り残された農民や労働者の気持ちをとらえることが共産党政権の安定には欠かせない。
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