HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 18 Oct 2010 02:11:03 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:実りの秋を次世代へ COP10開幕:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

実りの秋を次世代へ COP10開幕

2010年10月18日

 生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)が、名古屋で開幕します。この秋の実りの風景を次世代に残すためにも、名古屋議定書採択は譲れません。

 COP10とは、つまり会議です。人間と他の生きものが共生しつつ生き永らえる方策を話し合う、二年に一度の会議です。

 議場では、各国政府の代表が、ふだんは特に声を荒らげることもなく、条文の文言を積み上げる地道な作業に没頭します。

◆もし何も決まらなければ

 ただしこの会議には百九十三もの国と地域が参加します。日本では史上最大規模の国際会議です。それだけ重要で、普遍的なテーマを扱っているということです。

 議論の結果はこののち長く、私たちの暮らしにさまざまな影響を及ぼします。何かが決まれば強い拘束力を持ち、もし何も決まらなければ、地球上にひしめく無数の生きもの、無数のいのちが、より深刻な危険にさらされます。

 一連の「国連地球生きもの会議」前半は、遺伝子組み換え生物(LMO)の輸出入に規制をかけるカルタヘナ議定書第五回締約国会議(MOP5)。これまで重要な部分が欠けていた議定書の穴を埋め、「名古屋・クアラルンプール補足議定書」を定めることができました。そしていよいよCOP10。主要な課題は二つです。

 人間の営みは、生きものの絶滅速度を千倍に加速させたといわれています。詩人の谷川俊太郎さんは、その現実をジグソーパズルやオーケストラになぞらえました。

 ピースが欠けていくたびにパズルの画面は損なわれ、音符や楽器が失われていくごとに、不協和音があらわになっていくのだと。

 地球というオーケストラが、耐えがたい不協和音を奏でています。それを元に戻すため、アクセルを緩めてブレーキをかけましょう。そのための具体的な目標を立てましょう、というのが、一つ目の大きな課題。中長期にわたる新たな目標の設定です。

 八年前、オランダ・ハーグのCOP6で、二〇一〇年までに達成すべき目標が定められました。ところがことし五月に公表された科学者たちの採点では、保護の取り組み、政策、戦略、そして生物多様性損失の根本的な要因への対処など、ほとんどすべてが不十分との厳しい評価が下されました。

 名古屋では、現状分析、人材育成、保護区の拡大など、達成可能で効果の測定が容易な、より進化した目標づくりが必要です。

◆糸口は必ず見いだせる

 もう一つの課題は、医薬品や化粧品などの原料として、微生物や植物などの遺伝資源が生み出す莫大(ばくだい)な特許の利益を、資源を持つ途上国と、開発者の先進国が分け合うルール、名古屋議定書の採択です。どんな抽出物や加工物を対象に、どの時代までさかのぼって分け合うか、何度準備会合を延長しても、南北の溝は埋まりません。議定書の採択を危ぶむ声が高まっているのは事実です。でも、悲観している暇はありません。

 人類を飢餓や病気から救う可能性を秘めた遺伝資源が日々失われていく現状を思えば、もう先送りはできません。利益配分のルールを作り、公平な商取引の仕組みを築き上げれば、結局は南北互いの利益につながります。糸口は必ず見いだせます。

 議定書の足りない部分は、発効後に補足が可能。MOP5が示したばかりの教訓です。とにかく名古屋議定書というものを、この地で成立させること。それが議長国日本の未来に対する責任です。

 ドイツ・ボンのCOP9で、次の名古屋開催が決まってから二年、私たちにも、さまざまな学びがありました。

 生物多様性の問題は、自然保護の範疇(はんちゅう)だけにはとどまらず、生きものが生み出す衣食住を通じて、私たちの生活全般にかかわる問題でもあるということ。いのちの恵みを日々享受しておきながら、生きものや自然とのつながりを見失い、知らず知らずのうちに乱獲、乱用、乱開発に加担して、その結果、自らの暮らしを危機に追いやってしまったこと。そして、COP10が結局は人間のための会議であり、だれもが無関心ではいられないということも。

◆私たち自身の目標も

 折から深まりゆく実りの秋。色づく自然に抱かれて忙しく働く里の人、収穫された海山の幸は都会の食卓に送られます。童謡や唱歌に歌い継がれたこの風景こそ、生物多様性そのものです。

 たとえ議場に出られなくても、会議の進行を見守りながら目の前の風景に目を凝らし、両者を重ね合わせてみれば、この豊かさを次の世代に伝えていくために、私たちに何ができるか、私たちが何をすべきか、私自身のルールや目標も、きっと見えてくるはずです。

 

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