HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37753 Content-Type: text/html ETag: "100a9a-1612-1cc5a8c0" Expires: Sun, 17 Oct 2010 02:21:40 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 17 Oct 2010 02:21:40 GMT Connection: close 芸術の秋 アートの刺激で地域を元気に : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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芸術の秋 アートの刺激で地域を元気に(10月17日付・読売社説)

 芸術の秋も深まってきた。休日にゆっくりと美術館を巡り、古今東西の名画や現代アートなどを鑑賞するのも有意義な過ごし方ではないか。

 近年は地域の個性を生かした様々なアートの祭典が、各地で開催されるようになった。地域の歴史や文化とアートの展示を関連づけ、新たな街づくりに結びつける試みだ。

 愛知県では「都市の祝祭」をテーマにした「あいちトリエンナーレ」が開催されている。

 「トリエンナーレ」はイタリア語で3年に1度開催される展覧会を言う。隔年の場合は「ビエンナーレ」だ。ルーツは、1895年に始まった「ベネチア・ビエンナーレ」で、「現代美術のオリンピック」とも呼ばれる。

 「あいちトリエンナーレ」の主会場の一つとなった名古屋の繊維問屋街では、空き店舗内に泥や土を使って森を描いた壁画なども展示されている。この問屋街の歴史から刺激を受けて制作されたアート作品もある。

 難解と敬遠されることもある現代美術だが、こうした地域の中で触れることで、新たな発見をする人も多いことだろう。

 瀬戸内海では、香川県の直島(なおしま)など七つの島を中心に、今年7月から10月末までの予定で瀬戸内国際芸術祭が開かれている。

 直島には6年前、世界の第一級の作品を集めた民間の美術館が開館した。古い民家や廃屋などをアートの展示場として活用する企画も進められている。

 今回の芸術祭は、こうした取り組みを近隣の島にさらに拡大したものだ。例えば、坂の多いことで知られる男木島(おぎじま)では、荷物を運ぶ昔ながらの手押し車を芸術家たちが修理し、美術品として再生させる企画も行われている。

 国立ハンセン病療養所のある大島では、患者の苦難の歴史をテーマにした作品も展示中だ。

 船便が少なく、島巡りには時間もかかるが、東京などから多くの見学者が訪れている。

 美術の力を感じさせる企画だ。だが、芸術祭が終了して元の寂しい島に戻ってしまうのでは、地域おこしにはつながらない。

 無料のアトリエや宿舎を提供するなど、島にアーティストが定住したり、長期滞在したり出来る環境を整備していくことも一つの方法ではないか。

 芸術家と地域住民との間にしっかりとした信頼関係を築くことを通じて、地域活性化の道筋も見えてくるに違いない。

2010年10月17日01時05分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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