北米大陸に、数十億羽が生息していたとされるリョコウバトが絶滅したのは二十世紀初頭▼ニッポニア・ニッポンの学名を持つトキも、今、自然繁殖が試みられているのは中国由来の個体で、日本のトキは既に絶滅している。こうした受難の鳥の象徴ともいえるのが、インド洋はモーリシャスに生息していた飛べない鳥、ドードーだ▼はるか昔に絶滅しながら、なおその名が残るのは、英国の作家ルイス・キャロルが『不思議の国のアリス』に登場させたから。吃音(きつおん)だったキャロルは本名のドジソンと名乗る時、「ドードー、ドジソン」と発音しがちで、特に親しみを感じていたともいわれる(渡辺政隆著『一粒の柿の種』)▼米CNN(電子版)によると、最近、NPOの生物多様性センターが、原油流出事故を起こした英石油大手BPの前最高経営責任者に、その名も「ゴム製ドードー賞」を贈ると発表した。「絶滅危惧(きぐ)種を絶滅に追いやることに最も貢献した人物」に贈られる賞だとか。確かに、あの汚染では鳥類などの生物にも大きな被害が出た▼あすから名古屋で「国連地球生きもの会議」の中核、COP10(生物多様性条約締約国会議)が始まる。無論、いかにして生き物の絶滅に歯止めをかけるかが大きなテーマの一つだ▼とことん知恵を絞ってほしい。人類が「ゴム製ドードー賞」をもらうことがないように。