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米国が未臨界核実験を9月半ばに実施していた。2006年8月以来、4年ぶりだ。1997年の初実験から数えて24回目になるが、「核のない世界」をめざすと表明したオバマ大統領のもとでは初めてだ。[記事全文]
大阪証券取引所の新興企業向け株式市場だったジャスダックとヘラクレスが統合し、「新ジャスダック」ができた。上場企業は1千社を超え、時価総額8.7兆円というアジア最大の新興市場になった。[記事全文]
米国が未臨界核実験を9月半ばに実施していた。2006年8月以来、4年ぶりだ。1997年の初実験から数えて24回目になるが、「核のない世界」をめざすと表明したオバマ大統領のもとでは初めてだ。
オバマ大統領の目標を知るだけに、今回の実験は残念だとの声が日本の各地でおきた。04年に同様の実験をしたロシアへの影響も気がかりだ。大国の身勝手と映り、核開発を狙う国に口実を与える恐れはないだろうか。
そんな事態を引き起こさぬためにも、米国はロシアとの核軍縮条約発効や多国間の外交で、具体的な核の役割縮小に本腰を入れる必要がある。
オバマ大統領は核ゼロを目標にしつつ、核兵器が存在する限り、自国や同盟国の安全保障のために核戦力を維持する考えも示している。冷戦期に大量に作られた核弾頭の多くは老朽化が進んでいる。爆発力の大幅な低下や安全装置の機能低下を調べるため、未臨界核実験が必要との立場である。
オバマ政権が批准と早期発効をめざす包括的核実験禁止条約(CTBT)のもとでは、核爆発を伴う実験は認められない。けれど、未臨界核実験を明確に禁じてはいない。今回も、核分裂連鎖反応が起きない量のプルトニウムを使ったもので、核爆発は起きなかったと米政府は説明している。
米国は議会の反発などで、CTBTをまだ批准できていないが、オバマ大統領は今年4月の声明で、核実験をしないと明言した。
未臨界核実験については、新型核弾頭開発のためのデータ収集ではないかとの批判も根強い。
だが、オバマ大統領は、新たな核弾頭の開発は行わないとも強調した。この言葉を信ずるならば、当面は次の2点を実現してほしい。
まずは、米国がロシアと4月に合意した新たな核軍縮条約の発効だ。新条約の発効後7年以内に、戦略核弾頭の配備数を約3割削減する約束だ。上院外交委員会では承認されたものの、上院本会議では批准の見通しが立っていない。与党・民主党の苦戦が予想されている11月の議会中間選挙の結果にかかわらず、批准を急ぐ必要がある。
さらに、核兵器研究を続けてきたロスアラモス研究所は、核実験なしで核弾頭の爆発力などを調べる模擬実験システムづくりに、未臨界核実験のデータが役立つと言っている。オバマ政権は早期にそうしたシステムの信頼性を高め、CTBT批准へと議会を動かす説得材料にすべきだ。
未臨界核実験はするが、核軍縮はなかなか前に進めない。そんな状況が続けば、核ゼロに向けたオバマ大統領の指導力は危うくなる。昨年4月のプラハ演説で示した「核のない世界」への決意を着実に行動に移してほしい。
大阪証券取引所の新興企業向け株式市場だったジャスダックとヘラクレスが統合し、「新ジャスダック」ができた。上場企業は1千社を超え、時価総額8.7兆円というアジア最大の新興市場になった。
だが、高揚感はない。新興市場に対する投資家の不信を解消し、海外との競争に生き残っていく力を発揮できるかどうか。不安がつきまとう。
新興市場に対する投資家の信頼崩壊は目を覆うばかりだ。2006年1月のライブドア・ショックで受けた深手が癒えず、上場企業をめぐる不正会計などの事件も響いている。
上場する前から架空売り上げを計上したり、増資などで投資家から集めたお金を使途不明な形で社外流出させる詐欺まがい行為を繰り返したりと、手口は悪質巧妙になる一方だ。上場審査にかかわった取引所や幹事証券会社を投資家が訴えた例もある。
取引所は上場の際に健全な企業を見極める「眼力」と、上場後に問題経営へと転落しないよう監視や指導を怠らない「品質管理力」の強化が待ったなしの課題になっている。
大証も新ジャスダックの発足に合わせ、上場候補の企業経営者への支援策を充実したり、問題企業の上場廃止基準を明確化したりしている。この方向性は正しい。
だが、上場を目指す企業の中には勢いのあるアジア新興国の市場を選ぶ動きもある。個々の市場の魅力は、支援体制などのサービス、上場基準などルールの水準の高さといった総合力だ。優れた企業が海外より国内での上場に大きな魅力を感じるよう、日本の株式市場全体を盛り上げ、地方に分散する新興市場の再編も進めたい。
ところが、日本の株式市場全体が低迷を続けている。東証1部市場ですら、上場企業数の減少や売買代金の低迷など、不振ぶりが際立つ。
デフレ不況だけが原因ではない。1400兆円にのぼる個人金融資産を日本の未来に生かせるはずの資本市場が沈滞しているのはなぜか。真摯(しんし)に問い直す必要がある。
政策の力も借りて日本経済が活力を取り戻すことが大事なことは論をまたない。だが、株式市場の担い手である証券界が、多様な企業や投資家を新たに取り込む力を失っているところに大きな問題があるようだ。
腰を据えた投資をしたい、受けたいという投資家と企業を仲立ちする機能が弱体化してはいないだろうか。
投資先企業と個人投資家とが「顔の見える」関係を築ける機会を増やし、再生につなげてほしい。
国内の潤沢な金融資産を独自の強みに転換できなければ、日本の市場は世界で埋没するほかない。そんな危機意識が証券界全体に求められている。