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10月16日付 編集手帳

 古い都々逸にある。〈わたしゃお前に 火事場の纏 (まとい)振られながらも 熱くなる〉。敗れても、倒れても、栄冠を求めて胸を焦がす競技者も「火事場の纏」かも知れない◆女子柔道の谷亮子さん(35)はシドニー五輪で初めて金メダルを手にしたとき、真っ赤な目で「初恋の人にめぐり()ったような…」と心境を語った。競技者と栄冠の関係にはどこかしら恋愛に通じるものがあるのだろう◆谷さんが現役引退を表明し、“初恋の人”である金メダルに別離を告げた。これからは参院議員として国政の場でスポーツをもり立てていくという◆記者会見で、競技者としての限界を語る無念の言葉は聞かれなかった。柔道一本ならばともかくも、政治活動との両立が困難で、ということのようである。かつて堀江淳さんが歌ってヒットした『メモリーグラス』の一節、〈ふられたんじゃないわ わたしがおりただけよ…〉を思い出させるところが、いかにも全身これ負けん気の人らしい◆振られたか、降りたか、ヤボは言うまい。その人がくれた数々の感銘を顧みるとき、贈る言葉は「お疲れさま、ありがとう」に尽きる。

2010年10月16日01時15分  読売新聞)
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