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新聞週間 報道の使命を確認する機会に(10月15日付・読売社説)

 取材源と信頼関係を築いて歴史の真実を明らかにする。冤罪(えんざい)を生み出す検事の不正を調査報道で暴き出す――。

 今年度の新聞協会賞(編集部門)を受賞した二つの特報記事は、報道の使命、記者の原点を具体的に語って余りある。

 本紙の「核密約文書 佐藤元首相邸に 存在、初の確認」は、記者が、文書を保管していた元首相の次男、佐藤信二・元通産相に5年近くにわたる取材の末、公表にこぎ着けたものだ。

 「おやじ(元首相)がどう考えたかわからないが、歴史に真実を残すことが大事だと思う」。公表に際し信二氏は、記者に言ったそうだ。深い信頼関係があったからこそ報道を任されたのだろう。

 関係者の証言などがあっても、外務省は長く「密約はない」と言い続けてきた。こうした論争に終止符を打つ、歴史的意義は大きいと言える。

 もう一つ、朝日新聞の「大阪地検特捜部の主任検事による押収資料改ざん事件」の特報は、他紙ながら見事というほかない。

 主任検事がフロッピーディスクを改ざんしたようだ、との情報をつかみ、取材班は関係者からディスクを借り受け、その解析結果を検察幹部にぶつけた。

 最高検が捜査に乗り出し、今や検察組織の見直しが迫られる事態にまで発展した。新聞の調査報道の威力を十分に見せつけた。

 最近のメディア批判の中には、公権力機関とメディアの「距離の近さ」を指摘する声が多い。

 郵便不正事件でも、捜査段階では検察情報に寄りかかった報道が散見された、との批判がある。客観的で対等な報道を心がけてはいるが、そうした指摘は真摯(しんし)に受け止めたい。

 常に公権力をチェックし、不正や不作為、うそがあればそれを批判的に報道するのがメディア本来の役割だ。読者が期待するのも、そうした調査報道だろう。

 本紙の世論調査では、新聞の報道を「信頼できる」と答えた人は87%で、ここ30年、高い率を維持している。

 新聞や放送の報道に携わる者は、読者・視聴者の信頼を裏切ってはなるまい。先日は、NHK記者が大相撲野球賭博事件のさなか、捜査情報を親方に漏らしていたという不祥事が露呈した。

 きょうから新聞週間。「きっかけは小さな記事の一行だった」が代表標語だ。記事の一行が読者の背中を未来へ押すこともある。

 日頃の報道を再点検したい。

2010年10月15日01時21分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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