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10月15日付 編集手帳

 ドイツの哲学者T・W・アドルノは著書に書いている。〈アウシュビッツ以後、詩を書くことは野蛮である〉。大量虐殺という人類史上に類を見ない出来事のあとで、四季をうたい、愛を語ることのできる神経の持ち主は野蛮だ、と◆新聞のコラム書きも野蛮人の血を幾らか引いている。幼児の痛ましい虐待や、むごい殺人事件を取り上げた翌日に、季節の花を()でる文章を書くことがある。美しい月を語ることがある◆花や月に限らない。心躍る出来事に接したときは、いつも頭のなかに置いていた人のことさえ忘れている◆13歳で拉致された横田めぐみさんは、今月5日、北朝鮮のどこかで46歳の誕生日を迎えたはずである。地底に閉じこめられた33人が69日間を家族と離れて恐怖に耐え、地上に生還した映像に歓喜したあとで、めぐみさんの過ごした1万2000日の時間に気の遠くなる思いでいる◆きょうから新聞週間、今年の代表標語は〈きっかけは小さな記事の一行だった〉。小欄も手のひらで覆えば隠れてしまう小さな記事にすぎない。標語を胸に刻みつつ、とりとめのない独り言を聴いていただいた。

2010年10月15日01時21分  読売新聞)
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