高速道路の休日上限料金千円や、一部区間無料化などで、フェリーの経営が航路廃止を含む苦境に陥っている。地域の生活に不可欠の航路もあり、実態を踏まえた対応策が必要である。
日本旅客船協会のまとめでは、昨年三月末、宇野(岡山県)−高松(香川県)航路の共同運航から一社が撤退して以来、十一月までに四社五航路が廃止された。また柳井(山口県)−松山(愛媛県)航路を運航する企業も民事再生手続き中だったが、今月、新会社に事業を譲渡した。
航路の廃止は瀬戸内海に集中する。しかし、伊勢湾フェリーも先に鳥羽(三重県)−伊良湖(愛知県)航路廃止を届け出ていたが、二県などの支援で新体制をつくって、再出発した。横須賀(神奈川県)−富津(千葉県)を就航するフェリーなども、採算悪化で救済策が論議されている。
フェリーの不振は高速道路整備と並行する。深夜や通勤時間帯、大口、多頻度などの割引が次々に導入され、昨年三月から始まった普通車など休日上限千円制度、また今年六月の三十七路線五十区間無料化が、事態を加速化させたのは否定できない。
とくに複数の本四架橋と競合する瀬戸内の航路で、影響は著しい。国土交通省の三カ月ごとの通行量調べで昨年四月以降、四国発着のフェリー利用は車・人員とも四〜二割減である。
高速料金の各種割引が続き、無料化区間が来年以降も増えれば、フェリーの苦境はさらに進む。一時的な手当ては解決にならない。車の航送と関係なく、通勤通学をはじめフェリーを生活の足とする住民には死活問題である。
受益者負担を無視して高速料金は下げ、同じ公共交通であるフェリーの採算無視は不公平だ、との主張にも一理ある。
当面撤退しない二社が運航する宇野−高松航路は、国、関係自治体などが旅客、物流など利用の実態調査を十一月まで行う。伊勢湾など他地域のフェリーも、将来を決める前に、正確な利用実態をつかむのが先決ではないか。
その上で、一部業界に好都合なだけでなくどうしても生活に必要な航路なら、関係住民の同意を得て国、自治体の公正な負担による運航を考えるべきであろう。
事態悪化の根源にはつぎはぎの交通政策がある。道路網、鉄道、海、空の航路を含めた長期的・総合的な交通体系のビジョンが必要なことは、いうまでもない。
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