HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 15 Oct 2010 02:11:22 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:臨界前実験 核なき世界に逆行する:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

臨界前実験 核なき世界に逆行する

2010年10月15日

 米国が四年ぶりに臨界前核実験をした。オバマ政権では初めて。核爆発を伴わず国際法にも違反しないと主張するが、大統領が掲げる核軍縮、不拡散の実現とは矛盾するのではないか。

 実験は九月十五日にネバダ州の地下施設で行われ、今月十二日になって米当局が明らかにした。

 高性能火薬を爆発させ、衝撃波をプルトニウムに当てる。核物質が連鎖反応を起こして爆発する状態(臨界)の手前で止めるため、放射能汚染もないという。

 米エネルギー省傘下の核安全保障局は「核兵器の有効性と保管中の安全性を確認するため、必要なデータを収集した」と説明。すべての核実験を禁ずる包括的核実験禁止条約(CTBT)には違反しないと主張した。

 米国とロシアは核爆発を伴う実験をしない代わりに、一九九〇年代後半から二十回以上、臨界前実験を繰り返している。

 この状態が続けば、北朝鮮、イランが反発し、核開発を続ける口実を与えよう。核兵器を保有するインドとパキスタンがCTBT署名にいっそう消極的になることも懸念される。

 オバマ大統領は昨年四月、プラハ演説で「核兵器のない世界」の実現を訴え、同年のノーベル平和賞を受賞した。今年は広島の原爆忌に米政府高官としては初めて、ルース駐日大使を出席させた。

 一方で、米国は世界に核兵器が存在するうちは安全な方法で核戦力を維持する方針を明言し、同盟国に対し「核の傘」を提供する政策も堅持している。

 オバマ政権の政策は究極の目標としての核廃絶と、当面の核抑止力維持という「理想と現実」の間で揺れている。今回の実験は十一月の米議会中間選挙を控え、保守派に配慮したとの解釈もある。だが、国際世論が期待する「核なき世界」に逆行する行為であることは否定できない。

 仙谷由人官房長官は臨界前実験はCTBT違反ではないとして「抗議や申し入れは考えていない」と述べたが、日本政府は国際会議で核廃絶の先頭に立つと宣言している。被爆国として懸念を強く伝えるべきではないか。

 米国には再び、軍縮を加速化させる努力が必要だ。まず米ロが調印した新しい戦略兵器削減条約を米議会が批准するよう求めたい。世界最大の核保有国が規範を示さない限り、廃絶に向かって前進することはできない。

 

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