HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37300 Content-Type: text/html ETag: "100a9b-15ee-407a4000" Expires: Wed, 13 Oct 2010 22:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 13 Oct 2010 22:21:05 GMT Connection: close チリ鉱山作業員 歓喜の生還の後は安全対策を : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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チリ鉱山作業員 歓喜の生還の後は安全対策を(10月14日付・読売社説)

 世界中がかたずをのんで見守る救出活動だ。最初に助け出された鉱山作業員のアバロスさんが69日ぶりに地上に姿を現すと、歓声がわいた。

 南米チリのサンホセ鉱山の落盤事故で地下坑道に閉じこめられていた作業員を、救出用立て坑からケーブルでつるした専用カプセルで、1人ずつ地上に引き上げる作業が始まった。

 丸2日を要するという。33人全員の生還を早く確かめたい。

 鉱山で落盤事故が起きるのは珍しくない。だが、深さ600メートル以上もの地下空間で、全員が2か月以上を生き抜いたことは、ほかに例がない。

 事故後の、沈着な対応が見事だった。現場の状況をよく把握し、リーダーの統率下、パニックに陥らず、救援が来ることを信じて、長期戦覚悟で乏しい食料や水を分け合った。それが奏功した。

 高温多湿の劣悪な環境ながら、避難所があり、歩き回れる広い坑道があった。坑道内に残されたトラックのバッテリーから、暗闇を照らし出す電気を得たことも、生きる力になっただろう。

 チリの国をあげての救援体制、家族たちの励まし、日本を含む世界各国から寄せられた救命のための数々の知恵と多彩な支援物資、それらが一体となって、作業員の地上生還に結実した。

 事故があったのは、いわくつきの鉱山だ。金や銅を産出する中小規模の鉱山で、しばしば安全基準違反や事故を起こし、採算性、安全性を理由に一度は採掘を停止したが、2年前に再開していた。

 もうけを優先し、安全対策を怠った無責任な操業再開が、事故の背景にはあったのではないか。

 チリ政府も責任を免れない。

 鉱山産業はチリ経済の大黒柱である。とくに銅は、世界一の埋蔵量、生産量を誇る。近年、世界的な銅の需要増加と価格高騰を受けて、無理な採掘を拡大させていると言われる。中国の旺盛な需要増が大きく影響している。

 ピニェラ大統領は事故後、指導と監督が不十分だったとして地質鉱山当局トップを解任した。事故原因を究明し、鉱山産業への監督体制を抜本的に見直して安全対策に万全を期してもらいたい。

 日本も鉱山活動には長年の経験がある。その教訓を生かして安全面での国際協力があっていい。

 日本は銅をチリから最も多く輸入している。ハイテク産業に不可欠なリチウム、モリブデンなどの鉱山資源も豊富だ。資源確保の観点からも関係を大事にしたい。

2010年10月14日01時40分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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