HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 14 Oct 2010 03:11:28 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:B型肝炎訴訟 和解へ最大限の努力を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

B型肝炎訴訟 和解へ最大限の努力を

2010年10月14日

 B型肝炎集団訴訟で被告の国は具体的な和解案を示した。金額面では原告の主張との隔たりは大きいが、決裂という最悪の事態は避けたい。和解成立に向けて双方は最大限の努力をすべきだ。

 あまりの巨額に多くの国民は驚いたのではないか。

 集団予防接種の注射器の使い回しでB型肝炎ウイルス(HBV)に感染したとする原告への和解案を、原告以外の患者・感染者にも適用した場合、最大二兆円(国民一人当たり一・六万円の負担)になる。原告の主張通りの金額で救済すれば、八・二兆円(同六・四万円)に達する。

 国の案で合意しても、エイズウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)訴訟より金額が桁(けた)違いに大きく、過去最大規模だ。

 予防接種のおかげで多くの国民は感染症にかからずに済み、かかっても軽症で済んでいる。その陰で一部の国民はHBVに感染し、亡くなったり慢性肝炎・肝硬変に苦しんでいる。予防接種による感染者の被害救済を国民全体で分かち合うことに反対はないだろう。

 問題は救済の範囲だ。それを決めるとき、B型とC型肝炎との違いは無視できない。HCV訴訟では感染源が血液製剤であることがはっきりしていたため、救済範囲を決めるのは難しくなかった。HIV訴訟でも同様だった。

 HBV訴訟では事情が違う。訴訟の原告を含む全国百万〜百三十万人といわれる感染者の中には、予防接種のほか、母乳、輸血、手術など医療行為、食べ物の口移し、成人期の性交渉による感染も含まれる。予防接種による感染者だけを特定するのは難しい。

 予防接種によるかどうかの認定基準を厳しくすれば救済範囲が限定され、緩くすれば予防接種以外の感染者の紛れ込みが増える。

 この二律背反の中で救済範囲などを決めなければならないことに、和解の難しさがある。

 症状が出ていないキャリアーの扱いも異なる。HCV訴訟では千二百万円支払った。HBV訴訟では補償対象外とする代わりに定期検査費用などを負担し、慢性肝炎などを発症したとき一時金を支給する。C型と違い慢性肝炎に進行する割合がB型では少ないためだが、小さい確率とはいえ発症の不安に生涯おびえざるをえない心情には配慮する必要がある。

 適切な救済範囲、和解金の額はどれくらいか。総額が巨費に上るだけに、十分に議論を尽くさなければならない。

 

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