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2010年10月13日(水)付

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ドイツの20年―欧州統合への歩みに学ぶ

ベルリンの壁が崩壊し、街に繰り出した旧東独の人々が叫んだ。「我々は一つの国民だ」。西側の自由と豊かさへのあこがれ。噴き出した人々の情念が歴史の歯車を動かした。1990年[記事全文]

阿久根市―市民が自治を鍛えていく

鹿児島県阿久根市で市長の解職の賛否を問う住民投票が13日に本請求され、12月に行われる。市長と議会の対立で全国に知られた市で、今度は市民が直接、政治を動かす。竹原信一市[記事全文]

ドイツの20年―欧州統合への歩みに学ぶ

 ベルリンの壁が崩壊し、街に繰り出した旧東独の人々が叫んだ。「我々は一つの国民だ」。西側の自由と豊かさへのあこがれ。噴き出した人々の情念が歴史の歯車を動かした。

 1990年10月の東西ドイツ統一は、現代史の新しい幕開けだった。

 あれから20年。統一記念式典で演説したウルフ大統領の言葉は印象的だ。

 「旧東独の人々の叫びが、眠っていた国民のアイデンティティーを呼び覚ました。20年後のいま、この国には新しい自信、緩やかな愛国心、そして過去への大きな責任とともに、未来を担おうとの意識が生まれている」

 ドイツにとって、歴史的な成功を収めた20年だったといえよう。

 当時、近隣国にはドイツ統一への警戒心が強かった。2度の大戦とユダヤ人虐殺。戦後ドイツが示した反省にもかかわらず、被害の記憶はなかなか消え去らなかった。

 ドイツの指導者たちが取り組んだのは、地域統合をめざす欧州の多国間協力の枠組みに、代償を払ってでも自らを組み込むことだった。

 欧州最強の通貨だった独マルクを捨て、単一通貨ユーロの導入を認めた。ポーランドやチェコなど中東欧諸国を後押しして、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に次々迎え入れた。欧州諸国や米国はこれを支援し、ロシアも受け入れた。

 歴史の奔流に身をまかせるのではなく、国民の利益のため、流れに棹(さお)さして望ましい方向へ導いていく。そんなドイツの自覚的な外交戦略が大きな果実をもたらしたのは明らかだ。

 欧州市場の一体化により、ドイツの貿易のうち対欧は6割を超えた。自動車や化学品など強い産業競争力が欧州経済を下支えしている。

 外交では、米国やロシアと自立した関係を築く一方、イランの核問題の交渉に加わっている。アフガニスタンや旧ユーゴスラビアの治安回復に多くの兵士が活動している。

 もちろん陰の面もある。旧東独の1人あたり所得は旧西独の7割で、その失業率は高い。ウルフ大統領は式典で、トルコなどイスラム系移民を社会に取り込む大切さを国民に訴えた。

 単一通貨ユーロや財政の不安を乗り越えるために、EUの機能をどう強めるか。中東紛争やイラン核問題をどう解決していくか。EUが国際社会で果たす役割は極めて大きい。

 EUの中核メンバーとして、ドイツは欧州統合を深化させ、世界の課題解決の先頭に立つ責務がある。

 この秋、日本で「日独交流150周年」の行事が始まった。アジアでは、朝鮮半島に分断国家が残り、領土や主権をめぐる摩擦が起きている。

 置かれた環境は異なるが、ドイツの経験に学べることは少なくない。

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阿久根市―市民が自治を鍛えていく

 鹿児島県阿久根市で市長の解職の賛否を問う住民投票が13日に本請求され、12月に行われる。市長と議会の対立で全国に知られた市で、今度は市民が直接、政治を動かす。

 竹原信一市長は一昨年、職員給与の削減などを訴えて初当選した。以来、議員定数16を6に減らす提案をして否決されるなど、議会とことごとく対立した。議会から2回の不信任決議を受けて失職したが、直後の市長選で接戦を制して再選を果たした。

 竹原氏は高額という市職員の給与を公開し、市役所人件費の是正一本に訴えを絞って支持を集めた。

 かつて漁業が盛んで4万を超えた人口は、漁獲減や不況で2万4千に減った。こうした疲弊も、行革路線に対する支持の背景にはあっただろう。

 竹原氏の破天荒な市政運営は再選後にさらに勢いづいた。昨年11月、自らのブログで障害者差別と受け取れる記述が表面化。議会は謝罪を求める決議をしたが、竹原氏は拒んだ。

 この報道で竹原氏はメディア批判を強めた。今年3月には「傍聴席にマスコミがいる」と議会への出席を拒否。議員からの議会開催の要請にも応じなかった。地方自治法に違反するとして県知事から2度、是正を求められても議会を開かず、議員報酬や職員のボーナスを減らす条例改正や、副市長人事を次々と専決で決めた。

 議会の協力を得る努力をせずに専決処分を連発する手法は容認できない。片山善博総務相が違法と述べたのも当然だ。首長が議会を招集しない場合、議長に招集権を与えるよう地方自治法を改正することも検討されていい。

 地方自治は、首長も議員も住民が選ぶ二元代表制だ。首長と議会が議論を通じて自治をする。阿久根市の事態はその二元代表制の機能まひだと指摘する声もあるが、そうではない。

 もともと、竹原氏と議会の対立は市長の市議時代に始まっていた。常任委員会の北海道調査を「観光目的」とみて参加しなかった竹原氏に対し、議会は問責決議をした。

 議会のそんな乱暴なやり方に対する市民の不信感も、議員や市職員の仕事ぶりや手厚い処遇への不満とともに、竹原氏を市長に押し上げる背景になったとみることができる。

 そして今度は、市長の独断専行ぶりに市民が立ち上がり、自らの力で解決をめざそうと、解職請求への署名を集めたのだった。

 首長と議会の対立は各地に起きている。ともに怠慢や行き過ぎがないか、住民がチェックすることが求められている。阿久根市の試行錯誤も、住民に期待される仕事をしていくための契機として生かしてもらいたい。

 阿久根市民の経験は、地方自治を鍛える一つの過程といえる。

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