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天声人語

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2010年10月10日(日)付

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 獄につながれてノーベル平和賞を受けた古い例に、1935年のカール・フォン・オシエツキーがある。ドイツのジャーナリストで平和運動家だった。全体主義に抗する言論人の受賞はヒトラーを激怒させた▼その著作はナチスの脅威を突いて焚書(ふんしょ)に遭っていた。だがノルウェーのノーベル賞委員会は授与を勇断する。腹いせだろう、ナチスは後にノルウェーを占領したとき、委員を全員逮捕したという。時代も背景も異なるが、中国の人権活動家劉暁波(リウ・シアオポー)氏(54)の獄中受賞に、そんな近代史の一コマを思い出した▼NHKをはじめ、受賞決定を中国国内で報じる外国局の放送は、突然中断し、画面が黒くなったそうだ。メールは「劉暁波」の3文字を入れると送受信が不能になるという。現代の焚書を思わせる、かの国の負の一面である▼中国政府は事前に圧力をかけていたと伝えられる。決定後はノルウェーの駐北京大使を呼びつけた。対抗措置もほのめかしたと聞く。世界第2の経済大国にして、この政治的、社会的な小児性は、いびつを超えて不気味に映る▼妻の劉霞(リウ・シア)さんが授賞発表の前、「(当局は)夫のたった1本のペンを怖がっている」と語っていたのが印象深かった。作家で詩人でもある劉氏の書くものには、どこか魯迅を思わせる志と、骨の太さがあるとの評も聞こえてくる▼その魯迅は、希望とは地上の道のようなものと述べている。「もともと地上には道はない。歩く人が多くなればそれが道になるのだ」。中国民衆と政府が歩みゆく道を、世界が凝視している。

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