政府は追加経済対策と裏付けとなる総額五兆円規模の本年度補正予算案を決めた。景気を下支えし雇用の改善を図るというが、中身は小粒で迫力を欠く。菅直人首相は雇用対策に強い決意を示せ。
破綻(はたん)寸前の財政状態からはこれが精いっぱいなのか。内閣府によると一連の対策が実施されれば実質国内総生産(GDP)を0・6%程度押し上げるとともに四十五万〜五十万人の雇用創出効果があるという。
雇用対策としては九月の経済対策に続く第二弾となる。政府は二〇一一年度予算を第三弾と位置付け、新成長戦略の着実な推進で完全失業率を早期に3%台に引き下げることを目指している。
対策の中身をみると雇用調整助成金(雇調金)の受給要件の緩和や緊急人材育成・就職支援基金の積み増し、新卒者就職活動支援の強化などこれまで実施されてきた施策の引き延ばしが目立つ。
雇調金は業績不振企業が従業員を休業させる場合、休業手当を企業に支払う仕組みである。
また緊急人材育成基金は雇用保険の受給資格がなくても生活費(最大月額十二万円)を受け取りながら職業訓練が受けられる制度。本年度限りの措置で政府は「休職者支援制度」として恒久化する方針だが、法案成立の遅れを想定して現行制度を来年九月末まで延長することとした。
これらは失業者の急増防止策である。この半年間、完全失業率は5%台を超え完全失業者数も三百万人台に乗ったまま。非正規雇用労働者は年末までに二十九万人以上が失業する見込みだから、両制度の強化は確かに役立つ。
さらに新卒者支援では新たな奨励金を支給する制度を盛り込んだ。すでにトライアル(体験)雇用や既卒者の正社員採用企業への奨励金支給が実施されており、奨励金のばらまきが目立つ。
だが本命は雇用の創出だ。新成長戦略は環境・エネルギーや医療・介護、観光、アジアへの社会資本展開など七つの戦略分野を推進し二〇年度までに約五百万人の雇用をつくり出す計画だ。
雇用機会を増やすには企業が活力を取り戻すことが大切だ。企業自身の自助努力は当然だが、税制・金融面での支援が必要である。法人税減税や「雇用促進税制」の創設を検討すべきだろう。
菅首相は再三「雇用重視」を語っている。それならば新卒者の採用拡大で企業トップに迫るなど先頭に立って取り組んでほしい。
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