HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 08 Oct 2010 20:12:54 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:生物多様性危機 損をするのは人類だ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

生物多様性危機 損をするのは人類だ

2010年10月8日

 価値ある生きものを豊富に有する途上国、その潜在力を引き出す技術にたけた先進国。十八日に迫った名古屋の生物多様性条約会議(COP10)で両者の溝を埋めないと、損をするのは人類だ。

 COP10の二大テーマは、生物の絶滅に歯止めをかける新しい目標(名古屋ターゲット)の設定と、遺伝資源と呼ばれる生きものの利用と利益配分に関する国際ルール(名古屋議定書)の採択だ。ところが、遺伝資源の豊富な途上国と、それを用いて医薬品などを開発し、莫大(ばくだい)な利益を上げてきた先進国との溝が埋まらない。

 名古屋議定書の最終準備になるはずだった三月のコロンビア会合がまとまらず、日本の資金負担で七月のモントリオール会合にこぎ着けた。そこで、途上国への利益配分を義務付ける議定書の原案が示された。しかし、議定書のルールは遺伝資源から化学合成される「派生物」にも適用されるのか、いつまでさかのぼって有効かなど、多くの“空白”が残された。

 九月に再びモントリオールで開かれた会合は、延長の延長戦、だが穴埋めはさらに先送りされ、議定書の採択を危ぶむ声も強まった。ただし、ルールを何に適用するかは当事者間に任せることで合意するなど、歩み寄りの兆しも見えた。

 十三日から本番開会前々日まで、名古屋でもう一度、ぎりぎりの準備会合が開かれる。

 温暖化対策を進めていけば、途上国の経済活動にも規制がかかる。一方、生きものの保全とその持続可能な利用はあくまで表裏一体だ。遺伝資源という資本を絶やしてしまっては、お互い何の得もない。途上国の豊富な資源も、先進国の先端技術なしには生かせない。南北の溝が埋まらねば、新薬の開発が遅れるなど、人類全体が大きな損失を被ることになる。

 国連環境計画(UNEP)はCOP10で、生物多様性の経済的価値に関する最終報告書を公表する。COP10は、人類共通の資産としての生きものの価値を両者が再認識し、互いの持ち味を生かしてその持続的な利用を図ることにより、対等な協力関係を築き合うチャンスにできる。

 国連総会で菅直人首相が、生物多様性に関するリーダーシップを強く表明できなかったのは残念だ。名古屋議定書の採択は、困難だからこそ歴史に残る仕事になる。COP10議長国日本の牽引(けんいん)力を今すぐ見せてほしい。

 

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