HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37888 Content-Type: text/html ETag: "1009dd-16fd-94398080" Expires: Fri, 08 Oct 2010 03:21:41 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 08 Oct 2010 03:21:41 GMT Connection: close ドイツの20年 東西統一後の歩みに学べ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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ドイツの20年 東西統一後の歩みに学べ(10月8日付・読売社説)

 共産党一党独裁の国を民主的な資本主義国家に融合させる実験は成功したように見える。だが、真の統一には、まだ努力と忍耐が必要だろう。

 東西ドイツが一つになって、20年が過ぎた。その歩みは決して平坦(へいたん)ではなかった。

 第2次大戦の敗戦国ドイツは、ソ連が率いる社会主義陣営と米国主導の自由主義陣営に分断され、冷戦の最前線で対峙(たいじ)してきた。

 その40年の間にできた両国間の格差を埋めることが、統一後の第一の作業だった。20年間で推計1兆3000億ユーロ(約150兆円)が、豊かな西から貧しい東へと注ぎ込まれた。

 その結果、高速道路など東の基盤整備は進み、街の外観も一変した。域内生産も2倍以上に増えた。しかし、格差は残っている。

 東の人の賃金は、西の8割にとどまっている。失業率も西の倍に近い。このため、若者らを中心に東の労働人口が西に流出した。

 東西の「心の壁」も残る。統一の際、かつての制度や価値観を否定された東の人の多くは、「西の人は傲慢(ごうまん)」と見ているようだ。

 それでも、統一は正しかったと考える人は、東西地域ともに8割を超える。40年間敵対した兄弟国家を融合させる作業は、軌道に乗ったということだろう。

 ドイツのウルフ大統領は今月3日の統一20周年式典で、国民にトルコ系移民などイスラム教徒との融和を説いた。東西の軋轢(あつれき)は異文化間の摩擦ほど大きな社会問題ではなくなった証しと言える。

 ドイツには2度の大戦を引き起こした過去がある。欧州諸国は20年前、大国として復活したドイツが再び覇権を唱えるのではないかとの不安を抱いた。

 だが、この20年の歩みを見る限り、それは杞憂(きゆう)のようだ。

 シュレーダー前首相が国連安全保障理事会の常任理事国入りを求めたように、統一ドイツは確かに国益を主張する国になりつつある。だが、西独時代とは異なり、アフガニスタンへの派兵など国際的責任も担うようになった。

 同じ敗戦国の日本は、ドイツを上回る経済大国になったが、国際貢献には今も消極的だ。このままでは国際的発言力を高めることは難しい。ドイツの姿勢に学ぶべきではないか。

 日本はすぐ隣に、南北に分断された朝鮮半島を抱えている。この東アジアの不安定要因をどう平和裏に取り除くか。ドイツの歩みが参考になるのは、分断国家の韓国だけではないはずだ。

2010年10月8日01時41分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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