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2010年10月8日(金)付

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小沢氏のけじめ―民主党はこれでいいのか

菅直人首相と民主党は小沢一郎元代表に対し、政治的なけじめを強く求めなければならない。証人喚問に応じるなど国会での説明を促し、離党勧告か除名をする。最低限、それが必要だ。[記事全文]

主権者教育―社会の仕組みを知ろう

20歳になれば年金の保険料を負担するようになる。勤め始めれば、給料から健康保険料や所得税を払う。だが若者が社会に出る前に、これから自分が負担するお金で年金や医療制度がど[記事全文]

小沢氏のけじめ―民主党はこれでいいのか

 菅直人首相と民主党は小沢一郎元代表に対し、政治的なけじめを強く求めなければならない。証人喚問に応じるなど国会での説明を促し、離党勧告か除名をする。最低限、それが必要だ。

 小沢氏はきのう「政治活動は淡々と続ける」と述べ、離党も議員辞職もしないことを明言した。真相解明は「司法の場に移っている」とし、国会での説明にも前向きと言えなかった。

 検察審査会の議決で強制起訴は決まったが、公判の行方は予断を許さない。しかしながら小沢氏には、自らの政治資金をめぐる問題で元秘書ら3人が逮捕・起訴された時点で、すでに極めて重い政治的な責任が生じている。

 鳩山由紀夫前首相とともにダブル辞任に追い込まれたのに、わずか3カ月後に党代表選に立ち、多くの国民を驚かせもした。一連の政治行動に、選良としての節度を見ることはできない。

 有権者の期待を裏切らず、歴史的な政権交代の意義をこれ以上傷つけないためにも、強制起訴決定の機会に議員辞職を決断すべきだった。

 今後、法廷で闘うということだが、そのかたわら国会議員の重責を果たせるとは到底考えられない。

 民主党ではこれまで、疑惑を持たれた国会議員の多くが、自発的に離党したり、除名処分を受けたりしてきた。小沢氏が自らけじめをつけないというなら、これから厳しく問われるのは菅首相と民主党の対応である。

 菅首相は「議員の強制起訴は初めてであることも踏まえ、岡田克也幹事長が検討している」と、小沢氏の処分の判断を党に丸投げした。小沢氏の証人喚問についても、「国会で議論し、決定すべきもの」「本人が判断するのが望ましい」と繰り返している。

 小沢氏は先の代表選で党所属国会議員の半数近い支持を得た。ここで窮地に追いつめれば、党内に亀裂が走り、政権基盤が揺らぎかねないと恐れているのかもしれない。

 しかし、首相は「クリーンな政治」を掲げて再選を果たしたのではなかったか。今のような対応を続けるなら、民意は離れ、ねじれ国会を乗り切ることもおぼつかなくなるに違いない。

 何より懸念されるのは、与野党の対立が激化し、臨時国会で国民生活にかかわる政策論争や法案審議が滞ることだ。参院選後、国会のねじれを契機に、議論を通じた合意形成を重んじる「熟議の国会」を目指す機運もうかがえただけに、そんな展開は避けたい。

 そのためにも、菅首相と民主党は小沢氏のけじめの問題に、できるだけ早く結論を出す必要がある。

 野党も小沢氏喚問を国会の駆け引きの道具にしてはいけない。政治とカネの問題は必要があれば、法案審議と切り離して、別の舞台で徹底的に議論すればいい。

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主権者教育―社会の仕組みを知ろう

 20歳になれば年金の保険料を負担するようになる。勤め始めれば、給料から健康保険料や所得税を払う。

 だが若者が社会に出る前に、これから自分が負担するお金で年金や医療制度がどう運営されているのか、学ぶ機会は十分に用意されてきただろうか。

 所信表明演説で、菅直人首相が選択肢を述べた。多少の負担をしても安心できる社会を作ることを重視するか。それとも、負担はできる限り少なくして個人の自己責任に多くを任せるか。

 首相は前者をとりたいと述べた。

 医療や年金のための増税や社会保険料の値上げの負担を、私たち主権者はどこまで受け入れるか、拒否するか。

 しかし、今ある仕組みを知らないと判断の物差しを持てない。

 たとえば、年金の基礎部分である月額6万6千円の半分は国庫の金が使われている。高齢者が受け取る年金を維持する一方で、現役世代が払う保険料を抑えるためだ。

 今年度は埋蔵金と呼ばれる政府の資金も使ったが、来年度からはどう財源を確保するか。大きな課題だ。

 だが、年間で約10兆円の税金が、年金に投じられていることを知る人は4割に満たない。そんな調査がある。

 年金は、若者の生活も守っている。

 保険料を払うか、所得が低い場合などは免除や猶予の手続きをしていれば、万が一、事故や病気で一定以上の障害を受けた場合、若者も月8万円あまりの年金を受け取れる。

 だが、保険料を滞納し、障害年金を受けられない可能性がある人の半数近くはそれを知らないそうだ。

 学生の年金への加入が任意だった時代に、未加入で障害年金を受け取れなかった人たちは、長く苦しい裁判闘争を余儀なくされた。滞納したままの人も、そういう仕組みと経緯を知れば考え直すだろう。

 テレビ番組で、タレントが「消費税率25%のスウェーデンは19歳まで医療費が無料、5%の日本では生涯で2200万円かかる」とパネルを使って説明していた。日本の欄には「全額自己負担の場合」と注意書きがあった。だが、公的医療保険に加入していれば、少なくとも7割は保険で賄われる。全額、自分で払うことはありえない。窓口で払っているのは残り3割だ。

 消費税の負担と社会保障サービスの関係を強調するのはよいが、日本では医療費を自己負担で賄っているという誤解を広げないか、心配になる。

 知識があれば、政策の選択肢が、自分にどう影響するかを想像する力も持てる。社会に出る前後、学校や職場で集中的に、制度の基本や使い方を教えられないか。それは政治に参加する力を養うことにもなる。国会の論戦が始まった。あらためて主権者としての知識を学ぶ教育の必要を考えたい。

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