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10月7日付 編集手帳

 白紙で提出するのは気が引けてか、答案に自作の詩を書いた者がいたという。〈問題を見てピクリン酸、(わき)の下にはアセチレン…〉。作家の北杜夫さんが『どくとるマンボウ青春記』(新潮社)で高校生の昔を回想している◆化学の試験で苦労した人は多かろう。身を顧みれば、あの亀の甲――6個の炭素原子が結合されたベンゼン(かん)なるものを見ただけで降参した覚えがある。昨夜、海の向こうから届いたのは、亀の甲をめぐる朗報である◆今年のノーベル化学賞に、北海道大学の鈴木章名誉教授(80)と米国パデュー大学の根岸英一特別教授(75)が選ばれた◆受賞理由を平たく言えば、亀の甲と亀の甲を自在に接着して、役に立つ物質をいろいろ作れるようにした、ということらしい。お二人の成果はすでに高血圧の治療薬や抗がん剤に生かされている。日本人の誰もが、大いに胸を張りたい壮挙であろう◆国内の出来事にも、隣国との付き合いにも、モヤモヤがぬぐえない秋である。ニュースを聞いてピクリン酸、興奮した手に“汗”チレン…遠い昔の恨めしき「亀の甲」に、昨夜は祝杯を上げた人もいただろう。

2010年10月7日01時37分  読売新聞)
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