日銀が追加金融緩和に踏み切った。事実上のゼロ金利復活に加え、長期国債を含めた資産の買い入れ拡大を決めたのは評価できる。ただ、これで円高の流れが止まるかどうか、不透明感も残る。
日銀は八月に臨時金融政策決定会合を開いて新型オペの貸付枠を拡充した。これは直前に米国の連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和したにもかかわらず、日銀がなにもせず、円高が一気に加速した事態にあわてたためだった。
今回も、米国は十一月初めにも追加緩和に動く見通しが高まっている。景気が二番底に陥る懸念があり、バーナンキ議長は「必要なら追加緩和する」とはっきり述べている。
米国が動いて日銀はなにもしなければ、日米の金利差が縮小し、また円高が進む可能性が高まる。そうした状況で今回、日銀が動かないわけにはいかなかった。
緩和の中身をみると、これまでの日銀に比べれば、踏み込んだ印象がある。政策金利の誘導目標を0〜0・1%として事実上、ゼロ金利政策を復活した。この緩和政策は物価安定が見通せるようになるまで続けるとも宣言した。
さらに、バランスシート上に基金を創設して、長期国債を含めた多様な金融資産を五兆円程度、買い入れる。あえて基金を設けるのは臨時の措置である点を明確にすると同時に、日銀券発行残高を長期国債買い入れの上限にしている現行ルールに抵触しないようにする狙いもあるようだ。
このルールはかねて有力な学者やエコノミストたちから「意味がない」と指摘されていた。本来なら、基金創設よりもルールの撤廃が筋だったのではないか。
政策変更には意外感もあり、為替市場は一時、円安に動いた。だが、今回の決定で六月末から続いた円高の流れを断ち切れるかどうかは分からない。米国が再び緩和に踏み切れば、日銀の緩和と相殺してしまう恐れも残っている。
景気刺激の財政出動には各国とも限界がある中、いまや欧米を含めて世界は自国通貨安を容認する事実上の通貨切り下げ競争に入ったかにもみえる。
金融政策をめぐる駆け引きは今後も一層激しくなりこそすれ、和らぎそうにはない。日銀は円高の根本原因であるデフレ脱却を実現するまで、強い決意で緩和姿勢を堅持しなければならない。
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