白熱の競り合いにわいた今季のプロ野球に、ひとまず決着がついた。この熱気をポストシーズンゲーム、さらに来季へとつなげて、人気再興への軌道を確かなものとしてほしい。
一日、中日ドラゴンズのセ・リーグ制覇が決まった。パ・リーグは福岡ソフトバンクホークスが優勝を決めており、両リーグともまれに見る激戦となったレギュラーシーズンにようやく決着がついた。見ごたえあるシーズンだったと言っていい。
セは中日、阪神、巨人の三つどもえの優勝争い。パは五球団が小差でひしめき合う大混戦。今季はどちらも最終盤まで激しい競り合いが続いた。パは、一時優位に立った埼玉西武を最後にソフトバンクが大逆転するという劇的な展開。クライマックスシリーズ(CS)出場をかけた三位争いも、どう転ぶかわからない戦いでファンをハラハラドキドキさせた。
一方、セも上位三チームが一歩も譲らぬ大接戦を繰り広げた。中日は、百四十三試合を戦い、あと一試合のみを残す大詰めで優勝を決めた。最後の最後まで息をのむようなデッドヒートが演じられたのである。
ファンにとってはこたえられないシーズンとなったに違いない。何といっても白熱の競り合いほど勝負を面白くするものはない。それも、独自の個性や特長を持った多くのチームが頂点目指して互角の戦いを繰り広げることになれば、見る側はいっそう熱くなれる。それこそが長いペナントレースの醍醐味(だいごみ)というものだ。
この熱気を、ぜひともこれから始まるCS、日本シリーズへとつなげたい。そして来季は、それこそ全チームが上位争いから一歩も引かないような戦いを見せてほしい。そんなシーズンが実現できれば、間違いなく人気復活への大きな一歩となるはずだ。
グラウンド外の課題、難題は相変わらずだ。球団の経営問題。テレビ放映減少に象徴される注目度の低下。米メジャーリーグへのスター流出。対する改革はなかなか具体的に進まず、ここへ来てまたしても球団売却の動きも出てきている。
とはいえ、ファンを否応(いやおう)なくひきつける大熱戦は、必ずや上昇への突破口となり得る。個性を生かした多くのチームの競り合いは、共存共栄の将来像にもつながっていくだろう。改革と熱戦の両輪を、どちらも欠けることなく、力強く進めてほしい。
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