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2010年10月3日(日)付

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学級・考―窓を開け、風を入れよう

最近の小中学校の様子を取材して驚くのは、学級という子ども集団での人間関係の変わりようだ。1学級当たりの子どもの数は、小学校が平均28.1人、中学33.0人と、昔にくらべ[記事全文]

武富士破綻―貸金業市場をつくり直せ

消費者金融の膨張期を象徴した武富士が、会社更生法の適用を申請した。この破綻(はたん)劇は一企業の問題ではない。正常化へ、改革をどう進めるか。業界全体が問われている。武富[記事全文]

学級・考―窓を開け、風を入れよう

 最近の小中学校の様子を取材して驚くのは、学級という子ども集団での人間関係の変わりようだ。

 1学級当たりの子どもの数は、小学校が平均28.1人、中学33.0人と、昔にくらべ縮んだ。にもかかわらず、クラス全体の一体感は希薄になる一方だと、先生たちはいう。

 小5、小6ともなると、運動のできる子、苦手な子、アニメ好きの子といった小グループに分かれ、違うグループの子との接触はほとんどなくなる。中学では、同じクラスで「あの子の名前何だっけ?」も珍しくない。

 友だちづきあいはおっかなびっくりだ。似た者同士のグループも安心できない。どう思われるか気にし、空気を読んでしゃべる。いつも誰かとつながっていないと不安。メールには30分以内に返信をする。小学生の半数以上が「仲間外れにされないよう話を合わせる」と答えたとの調査がある。その割合は5年前から5ポイント増えた。

 小さな孤島で羽を寄せ合い、傷つくのを恐れる。学級や学校はいまやストレスいっぱいの空間かもしれない。我慢を重ねた感情はときに破裂し、暴力になり仲間や教師に向かう。グループ内では誰かに「いじられキャラ」を演じさせ、発散する。いじめにエスカレートしても、外からは見えにくい。

 のびのびとした人間関係を築く力はなぜ、こんなに弱ったのだろう。

 多くの教師や研究者が指摘するのが家族と地域社会の変容だ。兄弟、祖父母、近所のガキ大将、地域の大人。そうした異質な人とふれあう機会がめっきり減り、子どもは他者との関係のつくり方が未熟なまま、学級集団に放り込まれる。様々な問題行動の背景を、こうとらえることもできよう。

 文部科学省は、学級の人数の標準を40人から35人へと30年ぶりに改め、数年かけて学級規模を今よりひと回り小さくする計画だ。それに合わせて、教員の定数も増やそうとしている。

 子ども一人ひとりに向き合う時間をもっと確保するため、先生の数は増やすべきだ。だが学級を小さくするだけでよいか。子どもが社会性を身につけられる場になるよう、教室に風を吹き込む必要がある。

 多様な存在と交わる中で、子どもは自己を肯定される経験を重ね、対人関係能力をきたえてゆくものだ。

 増えた先生を臨機応変に組みあわせ、1学級を複数担任にしたり、子の状況に応じて学級の人数を考えたり。学生や地域のボランティアが入り、子どもとの斜めの関係を持ち込むことが有効だ。違う学年との交流授業や運動会といった行事も、大事にしたい。

 財源や教育効果をめぐって、少人数学級の議論が今後本格化する。どんな集団のあり方が子どもにとってよいかが、忘れてはならない視点だ。

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武富士破綻―貸金業市場をつくり直せ

 消費者金融の膨張期を象徴した武富士が、会社更生法の適用を申請した。この破綻(はたん)劇は一企業の問題ではない。正常化へ、改革をどう進めるか。業界全体が問われている。

 武富士は、過払い利息の返還で行き詰まった。出資法の上限29.2%より低いが利息制限法の上限20%を超す「グレーゾーン金利」は、2006年1月の最高裁判決で無効とされた。同年末に成立した改正貸金業法でその撤廃が正式に決定した。

 これまでの返還請求は、業界全体で数兆円にのぼる。まだ請求していない借り手も多く、業界が立ち直る展望は一向に開けない。

 武富士の更生法申請は、法的な整理を通じてしか企業再生の道が開けないという判断なのだろう。潜在的な過払いの借り手は200万人、負債は2兆円に及ぶ。更生法は、一般の債権者については同率で債権をカットする「債権者平等」が原則なので、過払いの返還請求もカットの対象になる。

 米国では、債務を踏み倒すために倒産という手段が使われることがある。武富士に同じような発想があれば問題である。また、巨額の資産を持つとされる創業家には、道義的なものも含めて責任を問う必要がある。

 過去の破綻処理では、民事再生法の下でクレディアが30万円までの過払い債権は全額弁済し、残りは6割カットした例がある。更生法でも再生法でも、少額の債権や連鎖倒産が懸念される中小企業の債権は優先的に弁済することが認められている。

 多重債務に陥った過払いの債権者も、破綻のふちという点で似ている。管財人は、こうした弱い立場にある人々にできるだけ配慮すべきだ。

 戦後の金融システム整備は、多様な庶民金融が銀行に近づく形で進んだ。その過程で融資を受けにくくなった人たちを吸収したのが消費者金融などの貸金業だった。生活苦にあえぐ人々を相手に、膨張はさらに加速した。

 暴力的な取り立てが批判されたり、ワンマン経営が招いたスキャンダルで信用が失墜したりしてきた。その結果、改正貸金業法による厳格な規制が導入され、メガバンクの傘下に入ることで生き残りを図る動きが相次いだ。

 貸金業の借り手には、金融弱者も多く含まれる。ヤミ金融などがはびこらないようにするには、過剰融資をしないことを前提に、より健全な消費者金融の市場をつくるべきだろう。

 韓国では97年の経済危機後、バングラデシュのグラミン銀行を手本にした貧困層向けマイクロファイナンス(少額融資)の振興に取り組んでいる。

 日本も世界の経験に学んで金融システムの多様化を進め、弱者を支える小口金融の体制を再構築するために出直す時期を迎えている。

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