北朝鮮では、故金日成主席、金正日総書記父子の写真を「一号写真」というらしい▼韓国・東亜日報の写真記者が、朝鮮労働党機関紙・労働新聞に掲載された一号写真などの分析から総書記のイメージ戦略を読み解いたのが、今年邦訳の出た『「偉大なる将軍様」のつくり方』(辺映〓著、荒木信子訳)だ▼それによると父子の姿は常に画面中央に据え、誰よりも大きく写るよう撮る、などの原則がある。反復掲載され、紙面には父子より大きなサイズの別の顔が載ることはない。父や自分を偉大に見せる総書記の戦略らしい▼興味深いのは一九九四年の金主席死去後の写真掲載頻度である。直後は主席の写真が集中掲載されたが、すぐ金正日氏単独写真が高頻度で載るようになり、再び主席の写真の集中掲載期を経て、次は父子のツーショットが毎日のように載せられる▼やがてそれが減り、九七年には正日氏単独写真が増えていく。辺氏はこれを「金日成のイメージに金正日を重ねること」を通じて、権力の安定的継承を企図した総書記の三年がかりの戦略とみる▼北朝鮮が昨日、総書記後継が固まった三男ジョンウン氏の写真や映像を初めて公開した。民を苦しめる独裁の三代世襲にため息が出るが、<写真による統治>がお得意の将軍様だ。ここで見せたこと、これまで見せなかったことにも何か戦略があるのだろう。