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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
昔の風流人たちは長雨を「ながめ」と読んで「眺め」に掛けた。あの猛暑から一転して秋の長雨の季節。国内外とも眺めはいまひとつだった9月の言葉から▼行く当てのない人を誰でも受け入れる寺がある。宮城県の行持院(ぎょうじいん)の僧、眞壁太隆(まかべ・たいりゅう)さん(61)は、来る人に何も聞かない。「みんな赤っ恥をかきながらここに来たね。ふつうに暮らしていたときは、まさかそういう身にはならないと思っていたわけです。その方の胸の中にね、土足で踏み込むようなことはしません」▼大阪の元校長、松下睦子さん(65)は教え子たちが書いた詩を一冊にまとめた。その一編に「わたしは 赤色が好き/夕日が 好きやねん/夕日って/めちゃんこ きれいねんで/なくなった お母さんが/夕日の中にうつるかも知れんで」。母親が自死した女児の思いの丈だ▼同じ大阪で平均年齢77.6歳のジャズバンドが敬老の日にライブを開いた。最年長は84歳。最年少のベース奏者宮本直介さん(73)は「いつ死ぬかわからない世代だから、僕たちは一回一回が真剣勝負になる」▼「寅さん」シリーズの監督山田洋次さんが人と人のつながりを、「昔の都市生活者は狭い長屋で暮らすためにたくさんの人間関係のノウハウを持っていたんじゃないでしょうか」。その難しい技術を今の都市生活では学べない、と▼コーラン焼却で宗教間の緊張が高まる中、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が「自分と異なる人を悪くいう人に立ち向かおう。本を燃やした炎で未来は照らせない」。多様性の内にこそ、私たちの明日は宿る。