HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 28 Sep 2010 23:11:12 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:議会と障害者 民主主義担う場ならば:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

議会と障害者 民主主義担う場ならば

2010年9月29日

 声帯を失った岐阜県中津川市の元市議が代読による質問を拒否された。賠償を求め提訴したが、訴えは一部しか認められなかった。障害者も健常者も対等だ。民主主義の場なら、なおさらでないか。

 共産党市議だった小池公夫さん(71)が下咽頭(いんとう)がんで声帯を切除し、声が出なくなったのは八年前。それでも「社会的弱者の代弁者に」と翌年の市議選に出馬し、再選を果たした。

 ところが、議会事務局職員に原稿を代読してもらう方法で発言を求めると、議会は反対多数で拒んだ。任期の四年間、一度も一般質問できず、三年前に引退した。

 小池さんは「障害者の参政権と意思表示手段の自己決定権を侵害された」と一千万円の損害賠償を求め、岐阜地裁に提訴した。

 今回の判決では、議会が当初、小池さんがパソコンに不慣れなのに原稿を音声に変換するパソコンソフトを使うよう求めたのは参政権の侵害と認めた。

 しかし、小池さんに代わって職員が一般質問をパソコン入力し、再質問からは職員の代読を認める折衷案を議会が出してからは、小池さんも質問できたのに「代読に固執した」と、市に十万円の支払いを命じるにとどまった。

 「地方議会は組織や運営に関する事項を自律的に決定する権限を有する」と判決は判例を引き指摘した。その通りではある。だからといって、障害者が意思表示する手段を多数決で決めていいのか。

 議会側は「代読では誤読の恐れがある」とした。しかし神奈川県鎌倉市議会では十年ほど前から脳性まひの市議が職員の代読で一般質問しているが、支障はない。

 どんな方法で意思表示するかは、その人の生き方にもかかわる問題だ。健常者が気づかねば「固執」と映るかもしれない。「パソコンを使えばいい」と決めつけて、障害者と対等といえるのか。

 日本も署名した国連の障害者権利条約(未批准)は「障害者が自ら選択する意思疎通の手段、形態、様式を受け入れ、容易にする」措置を取るよう明記している。障害者と健常者が区別なく社会生活できる「ノーマライゼーション」とは、健常者の方から壁を取り除いていくことだ。

 このことはもちろん、どの自治体にもあてはまる。住民全員を代表する議会には、障害者も健常者も等しく参加できることが欠かせない。それが、住民自治を担う議会本来の姿ではないか。

 

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