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天声人語

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2010年9月29日(水)付

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 かつての小欄で、日本の政権交代について「君は舟なり、庶人は水なり。水は舟を載せ、水は舟を覆す」という中国の古文を引いた。庶民は君主を支えるが不満ならひっくり返す。そう書いたところ、中国文学の一海知義さんから、より辛辣(しんらつ)な格言があると教示を頂いた▼それは君主を魚に、民衆を水にたとえる。「魚、水を失わば死す。水、魚を失うも猶(なお)水たり」。なるほど、民主主義以前の独裁には、こちらの凄(すご)みがぴったりくる。民衆とは支配されつつ支配者の生死を握る、恐ろしい存在かもしれない▼そんな独裁国家の北朝鮮で、3代目の世襲に向けた動きがいよいよ表に現れ始めた。金正日総書記の三男ジョンウン氏の名が、北朝鮮メディアに初めて公式に登場した。大将の称号を与えられたそうだ▼素顔は謎に包まれている。本人と確認された写真はこれまでにない。年齢さえ20代後半とされるだけだ。世襲といい極端な秘密主義といい、その奇っ怪は21世紀の国家とも思えない▼他方の一党独裁国家、中国も、国際協調にそむく奇っ怪ぶりが止まらない。共産党内には権力闘争があり、貧富の格差による民衆の不満は募る。そんな中で、対日外交はナショナリズムも相まって「地雷原」にたとえられる。尖閣問題での弱腰は、失脚につながりかねないのだと、理由の一端を聞く▼世襲の王朝も、膨張主義の大国も、わが隣国だ。遠い戦略を欠いては憂いばかりが連続しよう。尖閣をめぐる与野党の蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)の争いよりも、東アジアの時空に大きな図を描く政治がほしい。

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