ついこの間まで、猛暑日を記録していた所でも、さすがに真夏日になるようなことはなくなってきた▼各地の気温は、秋分の日辺りを境にようやく平年並みに近づいた感じで、朝夕は涼しく、所によっては肌寒いほど。最近は「やっと秋らしくなってきましたね」があいさつ代わりである▼もっとも気象庁の季節予報の定義では「夏」は六〜八月、「冬」は十二〜二月。さすれば秋は九〜十一月となるが、既に三分の一が過ぎようかというころに、ようやく「秋らしくなってきた」のではいかにも遅い▼この夏が猛暑だったのは、今さら言うまでもないが、ただ暑いだけでなく長かったわけだ。NHK放送文化研究所編『日本人の好きなもの』によれば、半分以上の人が「好きな季節」にあげる秋。その季節が、夏に侵食されて短くなるなら業腹である▼とまあ、こんな感じで、お天道様には悪口や不平も多くなるが、変化に富む気候のおかげで、年中、それを話題にすることができるのも確か。客商売には一般に政治や宗教の話題は避けよの教えがあり、逆に推奨されるのは、やはり時候の話だ▼先日、乗ったタクシーの運転手さんの解説がよかった。「天気の話は、誰かが悪いって話じゃないからねぇ」。いかにも。誰も傷つけず、みなでこぞって悪口を言える話題なんてそうない。やはり、お天道様には感謝しないと。