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衆院と参院で多数派が異なる「ねじれ国会」に与野党はどう臨むのか。今年度補正予算案を巡る調整作業が格好の試金石になりそうだ。菅直人首相がきのう、追加経済対策のための今年度[記事全文]
先進国と途上国の対立を超え、人類共通の利益のために新たな合意をつくり出してほしい。来月名古屋市で開く生物多様性条約の第10回締約国会議(国連地球生きもの会議)への期待で[記事全文]
衆院と参院で多数派が異なる「ねじれ国会」に与野党はどう臨むのか。今年度補正予算案を巡る調整作業が格好の試金石になりそうだ。
菅直人首相がきのう、追加経済対策のための今年度補正予算案の編成を政府・民主党首脳会議で指示した。今週末召集の臨時国会に提出する方向だ。
経済対策といえば、エコポイント制度の延長や若者向け雇用対策などに予備費約9200億円を活用することが先週、閣議決定されたばかりだ。追加対策が不可欠とは思えない。
にもかかわらず首相が補正に踏み切った理由の一つは、「思い切った規模の対策」を求める野党への配慮だろう。自民、公明の両党は4兆〜5兆円を提言している。民主代表選で小沢一郎氏が2兆円対策を求めたように、党内世論も意識せざるをえない。
財源のめどが立つという幸運にも恵まれた。昨年度決算の剰余金が出たうえ、今年度の税収が予想より増えている。かたや超低金利のおかげで国債の利払いは減りそうだ。これらで3兆〜5兆円の財源が見込まれる。
とはいえ、予備費で取り急ぎまとめた前回の景気対策と違って、補正予算を組んでまで打つ今回の追加対策である以上、いくつかの原則を踏まえておかねばならない。
第一に、財源を膨らませるために新たな借金である国債発行はしないことだ。来年度予算は3年連続で税収より国債による収入の方が多くなるのは必至だ。そんな異常事態のもとで菅政権が財政規律をゆるませる姿勢を少しでも見せれば、納税者にも市場にも不信と不安を広げてしまう。
第二に、来年度予算で本格的に取り組む新成長戦略や雇用創出につなげる内容にすることだ。
来年度予算では各省庁に政策経費の一律10%削減という厳しい枠を課し、「元気な日本復活特別枠」として1兆円超を生み出そうとしている。それに比べても3兆〜5兆円という規模は格段に大きい。
円高の逆風で今後は法人税の増収が期待しにくいことを考えれば、今回の財源は虎の子だ。長い目で日本再生に役立つ使い方をせねばならない。
第三に、補正予算案の編成作業が今後の与野党協議のお手本になるようにしてほしい。
ねじれの下では、野党との協調なしには国会運営は立ちゆかない。だからこそ、自民党などから「ばらまき」と批判が強い民主党の衆院選マニフェストを大幅に見直すことを前提に、与野党協議を呼びかけたらどうか。
そのさい注意すべきは、さまざまな野党要求をのみ込もうとするあまり総花的な内容になったり、規模が膨れたりすることだ。成長と雇用重視の基本を貫いてこそ認められる補正である。
先進国と途上国の対立を超え、人類共通の利益のために新たな合意をつくり出してほしい。
来月名古屋市で開く生物多様性条約の第10回締約国会議(国連地球生きもの会議)への期待である。
「生物多様性」という言葉は、「生物が互いに網の目のように複雑につながっている状態が重要だ」という考えを表している。1992年に採択された条約は、「生物多様性の保全」「資源の持続的な利用」「遺伝資源から得られた利益の公平な配分」を三つの主要目的としている。
名古屋会議では、この3番目の対策を盛り込んだ「議定書」が採択できるかどうかが注目されている。
生物多様性は、目的が大きすぎて具体的な対策がまとまりにくい。議定書ができれば20年近い条約の歴史で最大級の成果になる。「名古屋議定書」へ、議長国・日本の責任は重い。
議定書は「遺伝資源の利用と利益の配分」の英語の頭文字をとって、ABS議定書といわれる。
マラリアの薬キニーネは南米アンデスの先住民が解熱剤として使っていた植物からつくられた。今後はこのような、先進国企業が途上国の資源を利用して薬などを開発する活動では、利益の一部を原産国に支払うようになる。そのルールを決める議定書だ。
ふつうは議定書で「国際ルール」を決め、各国はそれを守るための国内法をつくる。しかし、ABS議定書では、各国の国内法の方が優先する面がある。生物多様性条約で「遺伝資源は国の主権的権利がある財産」という考えが採用されているからだ。
たとえば植物を採集する企業が原産国に支払うお金や技術協力は、原産国の国内法に従うことになる。結果的に、議定書は原産国の権利を強化し、南北対立の力関係を大きく変える可能性を持つといえる。
しかし、議定書づくりは対立点が残っている。途上国は、過去の利益の配分も求めている。「条約採択の92年までさかのぼるべきだ」との意見や、アフリカ諸国には「植民地時代の略奪も支払え」という声がある。先進国は、さかのぼることに反対だ。
原産国の植物をヒントにしてバイオ技術で「同じにおい」をつくったような「派生物」をどうするか、も問題だ。先進国企業はバイオ技術で得た知的財産についても心配している。
歴史を踏まえれば、先進国は途上国の主張に一定の理解を示すべきだろう。その半面、途上国があまり無理な要求をするのも合意を妨げる。
途上国の遺伝資源と先進国の技術が出合いやすくする仕組みをつくることで大きな利益を生み、それを分ける。将来の地球と人類の共通利益に視点を置けば、解決策は見えてくる。