はっきり言って驚きはない。イチロー選手が達成した十年連続、二百安打という記録▼無論、とんでもない金字塔だ。自ら持つ九年連続の大リーグ記録を更新、最多安打記録を持つ大打者ピート・ローズさんの二百安打、十回にも並んだ。それでも言う。驚きはない▼米デビューの年、記者には「大リーグの投手が打てるか」と訝(いぶか)しむように聞かれた。それが、今は少し不調だと「なぜ打てないのか」と聞かれる。十年を顧みるように彼は語ったそうだ。「周囲を変化させられたことに気持ちの良さはある」▼所属球団マリナーズの地元シアトルは世界的コーヒー店チェーン、スターバックス一号店があるなどコーヒーが有名。記録達成を伝えるシアトル・タイムズの記事が書いている。今や<イチローの二百安打>は、コーヒーなどと並ぶシアトル名物だ、と▼即(すなわ)ち彼は<イチローの二百安打>を毎年恒例、当たり前にしてしまった。それが容易でない数字なのは承知だし、何年かまでは驚きもした。だが、ほかでも快挙ずくめ。もう、ちょっとやそっとでは驚かない。いかにも、ファンも彼にすっかり変化させられた▼だが、楽観している。徹底した体のケアで知られる三十六歳。あのローズさんが引退した四十五歳まででも時間はたっぷりある。“快挙ズレ”したファンさえ驚く活躍もまだたくさん見せてくれるはずだ。