HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37695 Content-Type: text/html ETag: "15ea2a-1594-d139d400" Expires: Fri, 24 Sep 2010 21:21:39 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 24 Sep 2010 21:21:39 GMT Connection: close 中国人船長釈放 関係修復を優先した政治決着 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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中国人船長釈放 関係修復を優先した政治決着(9月25日付・読売社説)

 尖閣諸島沖での衝突事件で逮捕されていた中国人船長が、処分保留のまま、釈放されることが決まった。

 船長を取り調べていた那覇地検は「国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と説明した。

 中国・河北省で「軍事目標」をビデオ撮影したとして日本人4人が拘束されたばかりである。「国民への影響」とは、拘束が長引く可能性があることへの懸念をさすものだろう。

 地検は、船長の行為に計画性が認められず、けが人が出るなどの被害がなかったことも、釈放の理由に挙げた。

 だが、これでは、悪質性が高いとして船長を逮捕・拘置してきたこととの整合性がとれない。

 仙谷官房長官は、地検独自の判断であることを強調しているものの、菅首相はじめ政府・民主党首脳らの政治判断による決着であることは間違いあるまい。背景には早期解決を求める米政府の意向もあったとされる。

 「国内法に基づいて処理する」と繰り返してきた日本政府として筋を通せなかった印象はぬぐえない。国民の多くも同様の思いを抱いているのではないか。政府は国民の納得が得られるよう、十分説明を尽くす必要がある。

 尖閣諸島は言うまでもなく、日本固有の領土である。政府はこの立場を、繰り返し内外に示していかなければならない。

 今回の決着が、今後にもたらす影響も無視できない。

 尖閣諸島沖の日本領海内で違法操業する中国漁船への海上保安庁の“にらみ”が利かなくなる可能性がある。海保の体制強化はもちろん、海上自衛隊との連携も強めることが求められる。

 中国が今回、ハイブリッド車の部品などの製造に欠かせないレアアース(希土類)の輸出禁止措置をとったことは、中国が貿易相手として予測不能なリスクを抱える国であることを再認識させた。

 今後、中国に大きく依存する物資については、中国以外からも調達できるよう対策を講じておくことが肝要だ。

 中国の高圧的な姿勢の裏には、国内の対日強硬派への配慮もあろうが、青年交流や条約交渉の中止など矢継ぎ早の対抗措置は、明らかに行き過ぎている。

 日本は、単なる「友好」という言葉に踊らされることなく、「戦略的互恵」の立場で、冷静かつ現実的に国益を追求する対中外交を展開していかねばならない。

2010年9月25日01時24分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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