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2010年9月24日(金)付

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第三国定住―難民が暮らしたい国に

ミャンマー(ビルマ)から国境を越えタイの難民キャンプで暮らしてきたカレン族の5家族27人が28日、来日する。「人生をやり直したい」と。日本政府が初めて試みる難民の「第三[記事全文]

大相撲―組織の正常化はまだだ

角界に、活気が戻りつつある。終盤戦に入った大相撲秋場所で、ファンの視線を一身に集めているのが、連勝を続ける横綱の白鵬だ。7日目に千代の富士が記録し[記事全文]

第三国定住―難民が暮らしたい国に

 ミャンマー(ビルマ)から国境を越えタイの難民キャンプで暮らしてきたカレン族の5家族27人が28日、来日する。「人生をやり直したい」と。

 日本政府が初めて試みる難民の「第三国定住」第1陣だ。紛争や迫害のため自国から周辺国に逃れ出た人々に、定住先として移り住んでもらう。3年間で90人まで増やす計画だ。

 世界には1500万人もの難民がいる。平和を享受する国が彼らを保護することは、人道的な責務だ。だが日本に自力できて難民と認定される人は、年間数十人にとどまってきた。今回の受け入れは「難民鎖国」に風穴を開けることになるだろうか。

 5組の家族は最初の6カ月、東京都内のアパートを提供され、研修センターに通って日本語や習慣を学び、職業紹介も受けられるという。

 だが日本に初めて住む一家には、半年程度の研修では不十分だろう。言葉がおぼつかないと就ける仕事は限られる。在日ミャンマー人社会の助けがあるとしても、自立の道は険しい。

 年数百人単位で第三国定住を受け入れる欧州諸国は、自治体が積極的にかかわり、地域での定住を支援する。年数万人と規模の大きい米国では研修は1カ月だが、資金力のあるNGOが難民コミュニティーを支える。

 日本でも自治体やNGO、企業、教育機関が連携し、難民の暮らしを息長く見守り、一人ひとりの能力を開花させる「人づくり」の視点での支援態勢を築くべきだ。それが整わないままでは、27人の希望は、すぐに失望に変わるだろう。

 政府はアフガニスタン難民など海外での難民支援には年100億円以上を拠出する。その数%分でも、国内の難民支援に振り向けてはどうか。

 そもそも、日本へやってきて庇護(ひご)を求める人たちに対しても、政府は冷たい。難民認定に時間がかかり、その間の生活支援が乏しい。近年は収容施設に入れられる例が増え、認定申請者の間で動揺も広がっている。

 苦労ばかりで、幸せをつかめる確証がない日本は、難民キャンプでは人気のある行き先ではない。一方で、毎週数百人ものミャンマー難民が成田空港を乗り継ぎで通過し、北米の定住先に向かう。難民の「ジャパン・パッシング」は、アジアの先進国としてあまりに不名誉ではないか。

 民主党政権の中に、難民受け入れに取り組む司令塔が必要だ。関係省庁は責任を押しつけ合っている。現状では体面上、第三国定住の実績をつくりたかっただけに見える。

 少子化が進む日本は、外からどんな人たちを受け入れ、彼らが暮らしやすい環境をどう整えるか。問題はつまるところ、開かれた社会をめざす国家戦略の不在に、つきあたるのだ。

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大相撲―組織の正常化はまだだ

 角界に、活気が戻りつつある。

 終盤戦に入った大相撲秋場所で、ファンの視線を一身に集めているのが、連勝を続ける横綱の白鵬だ。

 7日目に千代の富士が記録した53連勝を超えて昭和以降単独2位となり、記録を59まで伸ばしている。白星はどこまで続くのか、双葉山の69連勝に肉薄できるかと、興味はふくらむ。

 振り返れば、7月の名古屋場所は異例ずくめの開催だった。

 野球賭博事件や維持員席券が暴力団員に渡った問題の余波で、NHKテレビの生中継が中止された。天皇賜杯の授与は見送られ、謹慎処分で土俵に上がれない力士が多数出た。

 日本相撲協会は8月に放駒新理事長が就任した後、副理事長職を新たに設けるなど、さまざまな手を打った。「暴力団等排除宣言」も行い、反社会的勢力との決別を誓った。

 NHKは、改革への道筋が示されたと評価し、中継を再開した。テレビ桟敷で相撲を楽しむ人々は、緊迫感あふれる映像の復活を喜んでいるだろう。賜杯の授与再開も決まり、懸賞金のスポンサーも戻った。協会が望んだ、場所の正常開催は果たせたと言える。

 だが、協会の矢継ぎ早の対応は、まず「場所の正常化」ありき、であった感が否めない。

 今場所直前、協会は野球賭博問題で最終処分を決めた。名古屋場所前に下した処分に加えて、力士と床山の2人を解雇、2力士を2場所の出場停止とし、22力士を譴責(けんせき)処分にした。

 賭博問題は警察の捜査を待って厳正に処分する、と言明していたのではなかったか。捜査はまだ続いているのになぜ処分を急いだのか。

 一方で、違法カジノ店への出入りが週刊誌で報じられた親方について、放駒理事長は「白でも黒でもないグレー」と歯切れの悪い説明をした。

 協会の特別調査委員会は目撃証言を得たが、親方が否定していることを重視、調査委の報告を受けて、協会は口頭での注意にとどめた。

 調査委に強制力はないため、限界があるのは分かる。だが、疑わしい部分が残っているのであれば、継続調査を断固として打ち出すべきだった。

 武蔵川前理事長は角界浄化へ向け、「ウミを出し切る」と宣言していたはずだ。相変わらず、身内への甘さがないだろうか。

 今場所の客足は伸びず、満員御礼が初めて出たのは白鵬が54連勝を果たした7日目だった。以後も国技館は空席が目立つ。横綱の連勝に沸く一方で、ファンは厳しい目を角界に注ぐ。

 部屋の運営のあり方や年寄株の問題など、改革への取り組みの真価が本当に問われるのは、秋場所の後だ。

 場所は正常化した。だが、角界自体が「正常化」したわけではない。

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