今年の都道府県地価(基準地価)調査によると全国の住宅地や商業地は昨年に続き下落した。割安感から外国資本の動きも目立つ。政府は地方で進む外資の山林取得の実態を早急に調査すべきだ。
基準地価は国土利用計画法に基づき都道府県が毎年七月一日現在の水準を示すものだ。国土交通省の公示地価、国税庁の路線価とともに土地取引の目安となる。今年は約二万二千地点のうち約99%が下落した。
それでも景気回復で下落幅は全用途で3・7%と前年の4・4%から縮小。三大都市圏は住宅地、商業地ともに下落率がほぼ半減した。これは名古屋圏の回復が大きかったためで、地下鉄桜通線の延伸による名古屋市緑区の地点は全国最高の上昇率となった。
また東京圏では横須賀線の武蔵小杉駅開業と再開発の効果で、川崎市中原区の商業地が前年のマイナスから一気にプラスになった。同市内では十月からの羽田空港の国際化で、対岸の工業地も下落から横ばいとなった。
東京圏の住宅地では目黒、世田谷、大田区などの城南地区を中心にマンション需要が回復した。駅に近い利便性や住宅地としての人気に加え、贈与税の非課税枠拡大や超低金利の住宅ローン実施という政策効果が働いた。
今後の地価動向は、土地の利用度をいかに高めるかが鍵を握る。重要なのは観光資源の活用と、商業地の整備である。
三重県伊勢市は、三年後の式年遷宮に向けて町並みの整備やさまざまな行事を開催したことで参拝客が増えた。商業地は昨年の横ばいから今年は上昇となった。
奈良市は平城遷都千三百年祭で観光客を集めた。近鉄奈良線と阪神なんば線の相互乗り入れで、神戸から奈良まで直通となったことが大きい。商業地は昨年の下落から上昇に転じた。
外資の導入も大切だ。二年前の金融危機で投資用物件に対する海外ファンドの動きは急速に縮小した。最近になって東京などで海外投資が回復する兆しがある。オフィス需要を盛り上げるためには景気回復が必要だ。
同じ外資でも地方の民有林を取得する動きには困惑を覚える。北海道だけで九件の取得が報告されている。資産保有が目的と伝えられるが、一部で水資源確保とか温室効果ガスの排出量取引で森林の売買が目的との見方もある。国交省と林野庁は、早急に実態調査に取りかかってもらいたい。
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