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天声人語

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2010年9月23日(木)付

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 名探偵「ブラウン神父」のシリーズは味わいが深い。宗教者らしく、神父は謎解きの合間に含蓄のある言葉を吐く。「人間というものは、善良さの水準を保つことはできるが、悪の水準を一定に保つことはできない。悪の道はただ下る一方だ」。そう言って大泥棒をさとす▼大泥棒も人間なら、検察官も人間だった。あらかじめ描いた事件の構図に沿って自白を迫る。ときには調書も作文する。かねて指摘されてきた特捜検察の「悪」、でなければ「暗部」の水準が落ちるべくして落ちた。それが今回の押収資料改ざん事件だろう▼前代未聞の不祥事を生んだのは、厚労省の元局長、村木厚子さんが被告になった郵便不正事件である。明快な無罪判決のあと、〈特捜が特高になる恐ろしさ〉と川柳欄に載った。だが、さすがの作者も、ここまでの怖さは想定外だったろう▼たとえば、否認している容疑者の毛髪を1本拾って犯行現場に置いてくる。やや極端なたとえだが、今回の件はそんな荒っぽさにも通じる。権力は私たちに、どんな濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)も着せることができる▼改ざんで逮捕された主任検事は特捜の敏腕だった。所属する大阪地検の幹部らは不正の疑いを把握していたようだ。禍々(まがまが)しい花は、組織に深く根を張って咲いたと見るのが自然だろう▼ブラウン神父に戻れば、その説教に感じた大泥棒は、盗んだダイヤを神父の足元に返して改心を誓う。検察も「秋霜烈日」のバッジを返上したつもりで背水の出直しを図るしかない。大泥棒は立派に更生するのだが、検察はどうなる。

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